導入事例の作成には、多くの時間と手間がかかります。しかし、その目的と得られる効果を正しく理解すれば、かけた労力以上のリターンを期待できるでしょう。
導入事例がもたらす主な効果は、以下の3つです。
これらの効果は、見込み客の購買意欲を高め、最終的な意思決定を後押しします。詳細を見ていきましょう。
導入事例は、見込み客に「このサービスを導入したら、自社はどう変わるのだろう?」という具体的なイメージを持ってもらうための、効果的な手段の一つです。
たとえば、紙とExcelで在庫管理をしていた製造業の導入事例として、クラウド在庫管理システム導入により定期棚卸の時間が大幅に短縮され、入出庫ミスも激減したという成果が出たとします。
成果を実現するために取り組んだことや工夫したことなどを取り上げれば、読者はサービスを使用した際にどのような成果を期待できるのかをイメージしやすくなります。
導入事例は、見込み客からの信頼を獲得するためにも効果的です。実際に製品を利用した顧客の声は、客観的で説得力があるからです。
特に、複数の部署が関わるBtoBの取引では、担当者が上司や関係部署を説得するための客観的な証拠が求められます。同業界や似た企業規模の成功事例があれば、「自社でも同じような成果が期待できる」と判断しやすくなるでしょう。
そのため、提案資料に顧客の成功事例を加えて商談を行うことで、成約率向上にも寄与すると考えられます。導入事例は、担当者の言葉に説得力を与え、確かな信頼関係を築くための土台となるのです。
また、一度作成した導入事例は、企業の信頼性を示す資産として、長期的に価値を提供し続けます。
導入事例は、見込み客が感じる不安を取り除くうえで有効な手段です。導入前の悩みから、導入時の手順、導入後の効果までを具体的に示すことで、自社に置き換えたイメージを持ちやすくなります。
たとえば、「導入期間は3ヵ月で、最初の1ヵ月は週1回の研修を実施した」といった具体的な流れを提示します。必要な準備や期間がわかるため、「これなら自社でもできそうだ」という安心感につながるのです。
また、実際に起きた課題やつまずき、乗り越え方も示すことで、過度な期待を防ぎ、準備に役立てられるでしょう。成功事例だけでなく、リアルな体験を含めることで、導入に向けた判断を後押しできます。
導入事例にはいくつかの形式があります。伝えたい内容や掲載の目的に応じて、適切な型を選ぶことで、読み手の理解度や共感度が高まります。導入事例の形式は、主に次の2つです。
それぞれの形式の特徴について解説します。
対談形式(Q&A形式)は、2人以上の人物が会話を交わすように展開していく形式です。インタビュアー(聞き手:自社)の質問にインタビュイー(話し手:顧客)が答える形で進んでいきます。
会話のように進んでいくため親しみやすく、テンポよく読めるのがメリットです。
注意点としては、取材時の会話をそのまま書き起こしただけでは読みやすい文章にならないことです。要点や順番を整理して、わかりやすくまとめる必要があります。
対談形式(Q&A形式)は、読者により共感してもらいたい場合に適しているでしょう。
▼例
―製品導入前はどのような課題があったのでしょうか?
A氏:煩雑な会計処理を手作業で行っており、毎月○○時間かかるうえにミスが頻発していました。
三人称形式(ルポルタージュ形式)は、インタビュアー(聞き手:自社)がインタビュイー(話し手:顧客)の話を第三者視点で客観的にまとめる形式です。
インタビュイーの表情や行動も描写することで、臨場感を演出できます。補足情報を盛り込みやすいのもメリットです。
ただし、対談形式と比べてインタビュイーの個性や感情を出しにくい場合もあります。
三人称形式(ルポルタージュ形式)は、情報を論理的に伝えたい場合に向いているでしょう。
▼例
A氏は、○○社の製品導入後の変化に手ごたえを感じているようだ。「毎月○○時間かかるうえにミスも頻発していた業務が、今は半分の時間で終わり、ミスも激減しました」と語るA氏の表情は明るかった。
ここでは、導入事例の展開パターンについて紹介します。効果的な導入事例作成に役立つパターンとしては、主に以下が挙げられます。
それぞれのパターンについて詳しく見ていきましょう。
課題解決型は、導入事例でよく使われる王道のストーリーパターンです。「このような課題があった → 製品を導入 → このように解決した」という流れは、読者が自社の状況と重ね合わせて共感してくれる可能性が高く、製品への興味につながりやすいといえます。
たとえば、製造業でストーリーを考えてみましょう。まず、「ベテラン社員の退職で、生産計画が混乱していた」という具体的な課題を提示します。そこから、「システム導入によって業務が標準化され、現場の残業時間が大幅に削減された」という成果につなげます。
このようなストーリーは、同じ悩みを抱える企業の担当者の心に響くはずです。具体的な成果はもちろん、現場で働く人々の感情の変化まで盛り込むと、ストーリーはさらに深みを増すでしょう。
他社比較型は、競合製品との比較を通じて、自社が選ばれた理由を伝えるストーリーパターンです。複数の選択肢で迷っている見込み客の、最後のひと押しとなり得ます。
見込み客が導入事例を通じて知りたいことの一つは、「なぜ他社ではなく、この製品を選んだのか」というリアルな理由です。顧客の言葉で選定の決め手を語ることで、セールストークにはない客観的な説得力が生まれます。
たとえば、会計ソフトを例にしてみましょう。「A社は多機能だが複雑。B社は安価だがサポートが不安。最終的に、操作のわかりやすさと導入後のサポート体制でC社に決めた」という具体的な比較検討の過程を示します。
このようなストーリーは、同じように悩む担当者の意思決定を力強く後押しします。ただし、他社比較型で導入事例を作成する際は、競合を下げる表現をしないように注意が必要です。あくまで「顧客のニーズに、自社の製品がもっとも合っていた」という客観的な視点を保ちましょう。
活用事例型は、製品が「どのように使われているのか」という導入後の日常を、具体的に描くストーリーパターンです。見込み客の「自社で使いこなせるだろうか?」という不安を解消します。
特に、多機能な製品や柔軟な使い方ができるサービスの場合、このパターンは効果的です。日々の業務の流れの中で、どのように製品が役立っているかを示すことで、読者は安心して導入を検討できるでしょう。
たとえば、プロジェクト管理ツールを例にすると、朝の会議でタスクを確認し、日中はリアルタイムで進捗を共有、夕方にはチームで成果を振り返る、という一日の流れを描写します。
さらに、「当初は想定していなかった顧客からの問い合わせ管理にも活用し、対応漏れがなくなった」といった、ユーザーならではの工夫を紹介するのもよいでしょう。単なる機能紹介ではなく、リアルな場面を描くことが重要です。
ブランディング型は、製品の機能ではなく、企業の価値観や社会的な意義を伝えるストーリーパターンです。目先の売上よりも、長期的なファン作りを目指します。
ESGがより考慮されるようになった現代では、人々は単によいモノを選ぶだけではありません。「どの会社から買うか」という視点も重視します。顧客とともに社会的な価値を生み出すストーリーは、企業の魅力を伝え、価格競争とは違う次元での差別化につながるでしょう。
たとえば、カーボンニュートラルを目指す製造業の導入事例では、「売上が上がった」ではなく、「SaaSツールで排出データを可視化し、温室効果ガス排出量を前年比で20%削減できた」という成果を紹介します。
このような事例は、同じ価値観を持つ企業からの共感を呼び、新たな取引のきっかけになることもあります。効率化といった指標だけでなく、より大きな視点を持つことが大切です。
成果につながる導入事例には、盛り込むべき共通の構成要素があります。ここでは、そのまま使える鉄板の構成要素を紹介します。
これらの要素がなぜ必要なのか、そして各項目で何を書けばよいのかを詳しく解説します。
導入企業の基本情報は、読者がその事例を自分ごととして読むための入り口となる情報です。
読者は、業界・企業規模・事業内容といった情報を見て、「この会社は自社と似ているか?」を判断します。共通点が多いほど、その後のストーリーに深く共感してくれる可能性が高まるのです。
たとえば、ただ「製造業」と書くよりも、「精密部品の製造業」と具体的に示すことで、同じ業界の読者から「まさにうちと同じだ」という強い共感を得やすくなります。
インタビュイーとは、インタビューをされる人(導入事例の場合は顧客)のことです。
インタビュイーの情報は、導入事例の信頼性を高めるために欠かせません。誰が発言しているのかを明らかにすることで、内容への信頼度が大きく向上します。
また、同じ立場にある読者にとっては、導入事例がより身近に感じられ、説得力も増すはずです。
さらに、導入事例で語られている言葉が決裁者の意見なのか現場の利用者の感想なのかを明確にすることで、事例への理解が深まるでしょう。
具体的には、氏名や役職、所属部署、導入における役割などがインタビュイーの情報にあたります。たとえば、「ご担当者さま」と記載するよりも、「マーケティング部 部長 ○○さま」と明記すると説得力が増すでしょう。可能であれば顔写真を掲載すると、信頼性はさらに高まります。
導入前の課題と選定の決め手は、導入事例の心臓部ともいえる項目です。
導入前の具体的な悩みを描くことで、読者の共感を得やすくなります。また、選定の理由を明確に示すことは、競合との差別化につながるでしょう。
たとえば「複数拠点での情報共有がうまくいかず、業務の重複や伝達ミスが頻発していた」という課題を提示します。そして、「A社は低価格だがサポートが海外拠点のみ、B社は導入実績が豊富だが対応スピードに不安点があった。なので、最終的に国内サポートの充実とUIのわかりやすさでC社に決めた」といった選定理由を伝えると、読者が導入の決め手や意思決定のプロセスを具体的にイメージしやすくなります。
▼導入の背景・決め手の例文(テンプレート)
【導入の背景】 当社では、○○の業務を手作業で行っており、毎月約△△時間もの工数がかかっていることが課題でした。特に、担当者によるミスの発生や業務の属人化が問題視されていました。 【導入の決め手】 ○○社のサービスを知ったのは、業界向けのセミナーでした。他社のサービスとも比較検討しましたが、最終的な決め手は「□□」という点です。当社の特殊な業務フローにも柔軟に対応できるカスタマイズ性と、導入後の手厚いサポート体制が、IT専門部署のない我々にとって非常に魅力的でした。 |
製品やサービスの活用方法は、読者が「自社でも使えそうか」を判断するための材料になります。多くの読者は、「実際にはどう使われているのか」「自社の業務に合うのか」といった疑問を抱えているからです。
こうした疑問に応えるには、実際の業務フローの中で、どのように活用されているかを明確に示すことが重要です。
たとえば、契約書管理システムの導入事例では、「営業部門での契約書作成から、法務チェック、最終承認、保管までをすべてオンラインで完結できるようになった」といった業務フローの改善を紹介するとよいでしょう。
さらに、「当初は想定していなかった問い合わせ管理にも活用し、対応漏れがなくなった」といった、ユーザーならではの応用例を加えるのも効果的です。読者が導入後の成功イメージを描けるよう、具体的な活用場面を伝えましょう。
▼活用方法の例文(テンプレート)
導入初期はまず、○○部門の△△業務に限定して利用を開始しました。特に「□□機能」を活用することで、これまで半日かかっていた作業が1時間で完了するなど、すぐに効果を実感できました。 導入から3ヵ月後には、マニュアルなしで全担当者がスムーズに操作できるようになり、現在では隣の△△部門にも活用を広げています。当初想定していなかった「□□」という使い方を発見し、さらなる業務効率化につながっています。 |
導入の成果は、事例の説得力を左右する重要な要素です。読者が特に知りたいのは、「実際にどれだけ効果があったのか」という点であるためです。
成果を示す際は、以下のような数字で語れる客観的な成果(定量的成果)を具体的に示しましょう。
あわせて、数字では表せない気持ちの変化(定性的成果)も伝えましょう。現場のリアルな声は、読者の共感を呼びます。具体的には以下のような内容が考えられます。
このように、客観的な「数字」と共感を呼ぶ「気持ち」の両面から成果を伝えることで、導入事例の価値は大きく高まるはずです。
▼成果の例文(テンプレート)
【導入前の課題】
【導入後の効果】
▼成果の例文(文章) 導入から半年で、○○にかかっていた工数が80%削減され、年間で約△△万円のコスト削減がかないました。定量的な成果はもちろんですが、現場からも「入力ミスを気にすることなく、本来の業務に集中できるようになった」という喜びの声が上がっており、社員のモチベーション向上という定性的な効果も実感しています。 |
今後の展望は、導入の成功が一時的なものではなく、これからも続いていくことを示すための項目です。今後の展望を示すことで、読者は製品の将来性や提供企業との長期的なパートナーシップをイメージしてくれるでしょう。
たとえば、顧客に以下のような未来を語ってもらうのがおすすめです。
このような前向きな言葉は、「この会社は、自分たちのビジネスの成長を一緒に考えてくれるパートナーだ」という強い信頼感につながります。
ここからは、導入事例の書き方を、準備から完成までの流れに沿って紹介します。効果的な導入事例を書くために、以下の手順で制作を進めてみましょう。
まず、「誰に、何を伝えて、どうなってほしいのか」という導入事例の目的を明確にしましょう。目的をはっきりさせることで、制作の指針ができ、読者の心に響く導入事例が作りやすくなります。
たとえば、「中小企業の情シス担当者に、製品の使いやすさを伝えたい」という目的を定めた場合、依頼すべき企業は「社員数50人前後で、IT専任者がいない企業」などが該当します。
また、インタビューで聞くべき質問も、「ITに詳しくない方でも使えましたか?」「導入時のサポート体制はいかがでしたか?」といった内容に絞れるでしょう。このように、最初に目的を明確にすることで、その後の方針や構成もぶれずに進めやすくなります。
次に、前のステップで決めた目的にもっとも合う企業を選びます。どの企業に登場してもらうかで、事例の説得力は大きく変わります。
選ぶ際のポイントは、主に以下の点です。
これらの点を総合的に評価し、事例の効果を最大化できるパートナー企業を選びましょう。
日頃から営業担当やカスタマーサクセスの担当者と連携し、顧客との関係性を把握しておくと、候補選びがスムーズに進みます。
導入事例の質を高めるには、インタビューする相手選びと質問の設計が欠かせません。誰に話を聞くかによって、得られる情報の内容や深さが大きく変わります。
まず、聞きたいことをもとに、誰に聞くか検討します。たとえば、導入の経営的な判断理由について聞きたいなら決裁者、使い勝手や具体的な効果について聞きたいなら現場の利用者に話を聞くのが妥当です。決裁者と現場の利用者の両方から話を聞くなどして複数の視点を組み合わせると、さまざまな立場の人が自分事として捉えられる説得力のある事例が完成し、成約率向上につながるでしょう。
次に、具体的な質問をまとめた質問票を作成します。質問は「導入前の課題」「製品を選んだ理由」「導入時の流れ」「数値で見た効果」「現場での実感」「今後の展望」といった6つのテーマに整理すると、導入事例制作に必要な情報を抜け漏れなく聞き出せるでしょう。事前に顧客へ質問内容を共有しておくと、相手も具体的な事例を用意しやすくなるため、より深い話を聞ける可能性が高まります。
このように、誰に何を聞くかを意識しながら準備することで、読み手にとって納得感のある導入事例を制作できます。
導入事例の内容を充実させて説得力を高めるには、丁寧なインタビューが重要です。事前に準備した質問に沿って進めるだけでなく、相手の話に深く耳を傾け、会話を広げていく姿勢が求められます。
相手の答えに対して「なぜそう感じたのですか?」「具体的には、どのような場面でしたか?」と深掘りすることで、リアルなエピソードを引き出せます。会話を録音する場合は必ず許可を得るようにしてください。
ポイントは、執筆前にまず構成(設計図)をしっかり作ることです。いきなり書き始めるのではなく、まず「導入事例の展開パターン」の章で紹介したストーリーのパターンを参考に、「課題→解決策→成果」といった全体の流れを決め、どの情報をどこに配置するか整理しましょう。これにより、話の筋が通ったわかりやすい記事に仕上げやすくなります。
構成が決まったら、原稿を執筆します。その際は、インタビューで得た顧客の生の声を効果的に使いましょう。客観的な事実やデータだけでなく、担当者の感情が動いたエピソードを盛り込むことで、記事にリアリティが生まれます。
このように、単なる情報の羅列ではなく、読者が思わず引き込まれるような魅力的なストーリーとして原稿を完成させることを目指しましょう。
原稿が完成したら、協力してくれた顧客に内容を確認してもらい、公開します。原稿確認では、事実関係に誤りがないか、企業のイメージを損なう表現がないかなどを確認してもらいます。丁寧なやりとりを心掛け、顧客との良好な関係を保ちましょう。
顧客から公開の許可を得たら、いよいよ自社のWebサイトなどで公開します。
ただし、公開して終わりではなく、作成した導入事例を最大限に活用していくことが重要です。導入事例の活用方法については後ほど説明します。
これまでの基本的な流れに加えて、もう一歩踏み込んだテクニックを取り入れることで、導入事例の質を上げることが可能です。
ここでは、競合と差がつく質の高い導入事例にするための6つのポイントを紹介します。
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
タイトルに具体的な数値を入れると、読者の注目を強く引きつけるのに有効です。
たとえば、以下の2つのタイトルを比べてみてください。
「良い例」のほうが、一目で得られる成果がわかり、思わずクリックしたくなるのではないでしょうか。
具体的な数字には、抽象的な言葉にはない客観性と信頼性があります。読者が抱く「本当に効果があるの?」という疑問に、一瞬で答える力があるのです。
インタビューの際は、具体的な数字に関する質問を盛り込み、魅力的なタイトルをつけましょう。
見出しを工夫すれば、記事全体のストーリーをわかりやすく伝えられます。読者の中には、まず見出しを拾い読みして、本文を読むか決める人もいるからです。
見出しを決める際は、ストーリーの基本構成である「起承転結」を意識すると効果的です。
起:導入前の課題は何か
承:どのようにして解決策を見つけたか
転:導入後の劇的な変化や成果
結:今後の展望や未来像
たとえば、以下のような見出し構成が考えられます。
見出し例1(起):属人化した業務で、チームが疲弊していた過去
見出し例2(承):決め手は「使いやすさ」。3社比較の末の決断
見出し例3(転):導入後、チームの残業時間が大幅に削減
見出し例4(結):次は新規事業へ。効率化が生んだ新たな挑戦
このような流れで見出しが構成されていれば、読者は本文を読む前に物語の全体像をつかめます。そして、「この事例をもっと知りたい」と、続きを読む動機付けになるのです。
リアルなエピソードは、導入事例に深みと人間味を与え、読者を物語に引き込みます。
たとえば、「業務効率が向上しました」という事実の羅列よりも、以下のようなエピソードのほうが心に響くはずです。
「導入前は、毎日の残業が当たり前でした。しかし今では定時に退社でき、『久しぶりに家族と夕食がとれた』と話す社員の笑顔が、何よりの成果です」
人は、単なるデータよりも感情のこもった物語に心を動かされ、記憶します。「家族との夕食」や「笑顔」といった具体的な情景が、読者にその場の臨場感を伝え、自分ごととして感じさせるのです。
インタビューの際は、客観的な成果だけでなく、担当者が一番うれしかった瞬間や大変だったことなど、感情が動いた場面についてもぜひ質問してみてください。
インタビューで得た「お客さまの声」を、わかりやすい形で効果的に使いましょう。第三者である顧客のリアルな言葉は、信頼の証しとなり得ます。
特に、導入前の不安から導入後の満足へと気持ちが変化する様子が伝わる声は、読者の共感を強く呼ぶことにつながります。
【お客様の声の例】
株式会社○○ △△様 「正直、導入前は半信半疑でした(笑)。でも、今では『(製品名)』がない業務は考えられません。チーム全員が同じ方向を向けるようになったのが一番の収穫ですね」 |
このような正直な言葉は、同じように導入を迷っている読者の心を動かし、「自分たちも成功できるかもしれない」という期待感を抱かせるのに効果的です。
なお、良い「お客さまの声」を引き出すには、単に満足度を聞くだけでなく、導入前の不安だった点もあわせて質問するのがコツです。お客さまの声だけでなく役職や名前、顔写真も掲載できると、信頼性はさらに高まるでしょう。
あえてネガティブな情報に触れることで、導入事例の信頼性が高まるケースもあります。
なぜなら、完璧すぎる成功談ばかりでは、読者に「うそ臭い」「よいことばかりいっている」という不信感を与えかねないからです。
たとえば、以下のように「課題」と「それをどう乗り越えたか」をセットで伝えます。
「導入当初は操作に戸惑う社員もいました。しかし、御社の手厚いサポートのおかげで、すぐに全員が使いこなせるようになりました」
このように正直に課題を伝える姿勢は、読者に誠実な印象を与えるでしょう。同時に、それを解決したサポート体制の質の高さもアピールできるのです。
また、ネガティブな情報を解決方法とセットで伝えることで、読者の導入後の不安を解消し、ミスマッチを防ぐ効果も期待できます。
導入事例は、専門用語を避け、誰にでも理解できる言葉で書くことが大切です。BtoBの担当者であっても、すべての業界用語を把握しているとは限りません。専門的な表現ばかりの事例は、途中で読むのをやめられてしまうこともあり得ます。
たとえば、以下のように言い換えるだけで、伝わり方が大きく変わります。
また、自社の製品やサービスについて紹介するときは、機能の説明にとどまらず、「何ができるようになったか」「どのような変化があったか」といった結果に焦点を当てると、読者は自社での活用をイメージしやすくなります。
導入事例は、作って終わりではありません。作成したコンテンツの価値を最大化するために、さまざまな場面で活用しましょう。
ここでは、代表的な4つの活用方法を紹介します。
一つのコンテンツを多角的に活用し、マーケティング活動全体の成果を高めましょう。
作成した導入事例は、自社のWebサイトやオウンドメディアに掲載するのが基本です。製品ページやサービス紹介ページを訪れた見込み顧客に対して、導入事例は信頼性を示す材料となるでしょう。
たとえば、「実際に使っている企業は?」「自社にも使いこなせそうか?」といった疑問を抱く検討段階のユーザーにとって、具体的な活用例は参考になります。広告や検索経由でサイトに訪れた人が、事例を通じて購入意欲を高めるケースもあるかもしれません。
また、たとえば「製造業 経理 効率化 事例」といった具体的なキーワードで検索されたときに、導入事例が上位表示されれば、新たなリード獲得のきっかけにもなり得ます。
製品ページから導入事例へリンクを貼る、もしくはその逆を行うことで、自社サイトの回遊性を高め、ユーザーの理解や納得感につながるでしょう。
作成した導入事例は、営業資料や提案書に組み込むことで、商談の説得力を高める強力な武器になります。
営業担当者が口頭で製品のメリットを説明することに加え、具体的な成果や実際の顧客の声を示す資料を提示できると、説得力は格段に高まるでしょう。
たとえば、提案書の最後に、商談相手の課題に合わせた事例を2〜3件紹介します。すると、顧客の中で導入後のイメージが湧きやすくなるはずです。
また、導入事例が載った営業資料や提案書は、顧客の担当者が上司を説得する際にも力を発揮するでしょう。
導入事例をSNSやメルマガで紹介すると、既存顧客との関係を深めつつ、新規顧客への認知拡大にもつなげられます。
SNSでは、要点を絞った事例紹介や印象に残る成果データを視覚的に伝えられるため、投稿が目に留まりやすく、シェアによる拡散も期待できるでしょう。
一方、メルマガでは、既存の見込み顧客に対して定期的に事例を届けることで、導入検討を後押しします。
「○○のような課題をお持ちの方へ」といった形で課題に寄り添った内容のメールを送ることで、検討の段階を一段引き上げられるはずです。
このように、Webサイトへの掲載と組み合わせてSNSやメルマガでの発信を行うことで、より多くの人に事例を届け、成果につなげやすくなります。
下記の記事でSNSやメルマガをはじめとする、さまざまなマーケティングの種類や手法について詳しく解説しています。
複数の導入事例を一つの資料にまとめてホワイトペーパーとして提供するのも、見込み客の獲得(リード獲得)につなげられて効果的です。
たとえば、以下のようなテーマで事例をまとめると、読者の関心を引けるでしょう。
このような資料は、ダウンロードと引き換えに、見込み客の連絡先情報を登録してもらう仕組みで活用します。これにより、将来顧客になる可能性のある人々と、継続的な接点を持てるようになるのです。
また、導入事例をホワイトペーパー化して単なる事例紹介でなく課題解決ガイドとして位置づけることで、自社の専門性をアピールする機会にもなります。
下記の記事で効果的なホワイトペーパーの作り方や時短のコツについて詳しく解説しています。ホワイトペーパーの作成についてお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
・【全手順を大公開】ホワイトペーパーの作り方!時短テクニックも紹介!
本記事では、成果につながる導入事例の書き方を、目的設定から具体的な執筆テクニック、そして公開後の活用法まで網羅的に解説しました。
導入事例は、単なる成功報告ではありません。顧客のリアルな声を通じて、見込み客の心を動かし、信頼を築くための強力な武器です。ぜひ、この記事を参考に、貴社の実績を魅力的に伝えるコンテンツ作りに挑戦してみてください。
もし、「導入事例の作成にリソースを割けない」「取材や執筆のノウハウがない」といったお悩みをお持ちの場合は、TECH+にご相談ください。TECH+では、質の高い導入事例の制作代行から、制作したコンテンツを活用したタイアップ広告の掲載、ホワイトペーパー化、事例企業様とのウェビナー開催によるリード創出まで、一気通貫でサポートします。