コミュニティマーケティング(Community Marketing)とは、ユーザー同士が交流できるコミュニティで取得した情報をマーケティング活動に活かすことをいいます。
2000年代に欧米で誕生したマーケティング手法です。
共通の興味を持ったユーザー同士のやり取りやコミュニティ運営会社への問い合わせができる場を提供し、ブランドロイヤリティを高めてファンになってもらうためにコミュニティを運営します。
[コミュニケーションマーケティングの具体策]
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さまざまなマーケティング手法が登場していますが、コミュニティマーケティングが注目を浴びている理由として、以下のようなものが挙げられます。
ここでは、コミュニティマーケティングが注目を浴びる理由を解説します。
FacebookやTwitterのようなSNSが普及してきました。従来は企業側が一方的に情報発信するのが主流でしたが、SNSの普及によりユーザーと双方間のコミュニケーションができるようになりました。そのため、ユーザーの声を収集しやすくなってきています。
また、SNSの普及により、ユーザーが気軽に情報発信できるようになりました。近頃は、知り合いの口コミを信頼して商品を購入するという方も増えてきているため、マーケティング施策としてコミュニティマーケティングが注目を浴びています。
出典元:『消費者庁 今後、現れると想定される3つの消費行動タイプ』
インターネットの普及により、企業が情報提供しなくてもユーザー自身が欲しい情報を収集できるようになりました。その結果、趣味や嗜好、ライフスタイルなど消費者ニーズ多様化しました。
ユーザーは自分に見合う商品やサービスを購入したいと思っており、パーソナライズ化が加速してきています。消費者庁による消費に関する価値観は「自律的消費」「他律的消費」「偶発的消費」に多様化すると予想されており、企業はユーザーの声を収集して商品開発やサービス改善をしなければいけなくなってきたのです。
そのため、ユーザーとコミュニケーションをとる必要が出てきて、コミュニティマーケティングが注目を浴び始めました。
出典元『矢野経済研究所 サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2022年)』
近年は洋服や家具を購入せずに定額利用するなど、サブスクリプションモデルが増えてきました。政府がSDGsに取り組む重要性を説いているため、サブスクリプションモデルのビジネスは増加していく見込みです。
しかし、サブスクリプションモデルのビジネスは、ユーザーに継続してサービスを利用してもらうために顧客ロイヤリティを高める必要があります。そのため、顧客と接点が持てるコミュニティを立ち上げる企業が増えてきているのです。
注目を浴びるコミュニティマーケティングに取り組むと、以下のような効果が見込めます。
ここでは、コミュニティマーケティングの効果について詳しく解説します。
コミュニティで得た情報を集めて商品開発やサービス改善すれば、ユーザーは「コミュニティ運営会社はユーザーの声を反映してくれる」と喜ぶため好感度が上げられます。
誰でも自分の意見が尊重されて、商品開発やサービス改善されれば嬉しくなるものです。このような交流を心がけ、既存顧客と交流して熱烈なファンを育成できれば、商品のリピート購入が見込めるようになります。
また、クロスセル(別の商品を購入してもらうこと)やアップセル(ランクの高い商品を購入してもらうこと)も期待できるでしょう。その結果、顧客1人当たりの売上額が伸ばせ、顧客LTV(顧客生涯価値)を最大化できます。
コミュニティ上ではユーザー同士の交流をはじめ、運営会社も一緒に交流することもあります。コミュニティ上では、運営会社とユーザーの距離が近く「どんな商品が欲しいか」「発売した商品の使い心地はどうか」など率直な意見が聞けます。
このようなユーザーの声を商品開発やサービス改善に活かせることもコミュニティマーケティングの魅力です。
企業は商品開発やサービス改善を行うためにアンケートやユーザーインタビューを実施することがありますが、謝礼を渡すことが大半のためジャッジが甘くなる傾向があります。
その一方で、ユーザーが積極的に意見交換するコミュニティであれば、ジャッジが甘くなることはなく率直な意見が聞けます。
コミュニティ内で意見交換が活発になると、商品やサービスの疑問はユーザー同士が質問し合い解決し合うようになります。
例えば、商品の説明文が不足していたら「どのように商品を使うのか?」「どのように操作すれば良いのか?」と悩むことでしょう。このような悩みをコミュニティで聞いて、別のユーザーが教えるというような仕組みが構築できるのです。したがって、企業のカスタマーサポートが動く必要がなくなり、サポートコストが削減できるのです。
コミュニティ運営をしていき、ユーザーを熱烈なファンに育成できれば企業や商品の良い口コミをSNS上で発信、拡散してくれるようになります。その投稿を見たユーザーが新規顧客になるなど、紹介顧客の獲得が期待できます。
とくに、商品開発やサービス改善で自分の意見が反映された場合は、1人でも多くの人に知ってもらいたいと感じるはずです。このような動機で積極的に情報発信してもらえ、広告費をかけずに新規顧客の獲得が期待できます。
コミュニティマーケティングの効果を知り、取り組み始めたいと思った方もいるでしょう。
ここでは、コミュニケーションマーケティングの取り組み方をご紹介します。
[コミュニティマーケティングの手順]
ここでは、それぞれの手順について詳しく解説します。
最初にコミュニケーションマーケティングの目的を定めます。
なぜなら、コミュニティマーケティングで成果を出すためには時間がかかるためです。成果が出るまで時間がかかると「施策の費用対効果が悪いのではないか?」と疑問に感じてしまうかもしれません。
また、運営途中でコミュニティの目的がブレてしまうこともあります。このような問題を防止して、長期的にコミュニティを運営していくために目的を定めましょう。目的には、以下のようなものがあります。
[コミュニティマーケティングの目的]
コミュニティの目的を定めたら、コミュニティツールを選んでいきます。コミュニティツールは目的に見合うものを選びましょう。
例えば、ユーザーの声を取得したい場合は匿名性で意見が述べられるツイッターを利用すると商品の不満に対する声を収集できるようになります。
カスタマーサポートコストを削減したい場合は、Slackなどでヘルプコミュニティを立ち上げると運営しやすくなります。
その他にも、以下のようなコミニティーツールがあるため参考にしてみてください。
[コミュニティツールの例]
コミュニティツールを選んだら、以下の運用ルールを決めていきます。
コミュニティ上の情報は収集して商品開発やサービス改善に役立てる必要があります。また、ユーザーの質問に対して運営会社が回答しなければいけないこともあります。これらに対応するコミュニティ管理者を決めましょう。
コミュニティを始める上で、熱心に意見を出してくれるオピニオンリーダーを探しましょう。有益な情報を発信したり、共感できたりする意見が飛び交うとコミュニティが盛り上がります。さほど商品に興味がない人を参加させてもコミュニティは盛り上がりません。そのため、オピニオンリーダーを中心に熱烈なファンをコミュニティに参加させて少数精鋭で運営を始めるようにしましょう。
コミュニティを盛り上げるためには、世界観を作り出すためのアイデアも欠かせません。コミュニティのオリジナルグッズを制作して世界観を作りあげるなどして、ユーザー満足度を高めていく必要があります。
コミュニティマーケティングの取り組み方をご紹介しましたが、具体的にどのようにやるのでしょうか?どのような効果が見込めるのか、コミュニティマーケティングの成功事例を見ておきましょう。
サンドイッチチェーン店「サブウェイ」の公式Twitterには100万人以上のフォロワーがいます。2018年秋から公式Twitterを運営して、4年間でフォロワー数5倍、インプレッション数は約14倍に成長させられました。
同社がフォロワー集めに成功している理由は、アクティブサポート部隊を立ち上げて、フォロワー1人1人に話しかけているためです。
また、サブウェイについて話したくなるような企画を運営しています。例えば、フォロワー100万人を突破した記念では、総額100万円の商品が当たる企画が発表されました。このように参加者を楽しませる工夫をしてファン化に成功し業績をV字回復させました。
スナック菓子「じゃがりこ」は、2007年に会員制コミュニティサイト「それいけ!じゃがり校」を開校するなど、コミュニティマーケティングを先駆けしていました。じゃがり校は誰もが入学できるわけでなく、毎年12月から2月に入試が実施され、入試に合格すると4月に生徒になれます。
また、在籍期間は中学校や高校と同じ3年間という仕組みを採用。晴れて学生になれた人には、じゃがりこが開発されている工場見学や、新商品のフレーバーを決められる投票権が与えられるなどの特権が付与されました。
このような面白いコミュニティにより、熱烈なファンづくりに成功しています。2021年じゃがり校は閉校され、Twitterで「#みんなで創るじゃがりこ2021」を展開するなどSNSに移行し始めています。
名刺管理アプリ「SanSan」はサポートコストを削減するために、コミュニティを立ち上げました。
同社は名刺管理アプリSanSanを活用して人脈を広げることに成功した人を探し、ユーザー向けのセミナーに登壇してもらうように協力を依頼しています。
また、SanSanを愛用する協力者に声をかけてコミュニティを誘導し、オフラインユーザー会を実施しています。オフラインユーザー会では「SanSanを利用してビジネス変革をもたらした人」を表彰するアワードなど面白いイベントを開催しており、「良い人脈が築ける」とビジネスマンのファン化に成功しています。
SanSanの事例は、BtoBのコミュニティマーケティングにおすすめです。
成功事例をはじめ、コミュニティマーケティングの取り組み方をご紹介しましたが、さまざまな施策があります。
自社に見合う施策をするためにも、コミュニティマーケティングを学習しましょう。学習方法には、以下のようなものがあるため参考にしてみてください。
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コミュニティマーケティングに取り組めば、「顧客LTVに最大化」「ユーザーの声の収集」「サポートコストの削減」「紹介顧客の獲得」などの効果が得られます。しかし、成果を出すためには正しい方法で長期的に取り組みことが大切です。
この記事では、コミュニティマーケティングの取り組み方をご紹介したため、参考にしながら取り組んでみてください。