マーケティングコミュニケーションとは、販売戦略のプロモーションの一種です。企業から消費者へ一方的に情報発信するのではなく、双方間でコミュニケーションがあることが特徴です。
マーケティングにおける重要な戦略の4P分析では「Promotion(販促戦略)」に該当し、4C分析では「Communication(コミュニケーション)」に該当します。具体例を説明すると、商品デザインを魅力的に仕上げ、消費者がSNS上で商品を紹介してくれる仕掛けづくりなどがあります。
マーケティングコミュニケーションの役割は主に3つです。
ここでは、マーケティングコミュニケーションの役割について詳しく紹介します。
売上を伸ばすためには、自社商品の概要を知ってもらう必要があります。
ニーズを抱えている顕在層に訴求することも大切ですが、ニーズ自体に気づいていない顕在層に訴求して自社商品の魅力に気づいてもらうことも大切です。ある程度、自社商品の特徴まで理解してもらい、記憶に残してもらうためにマーケティングコミュニケーションを行います。
資料請求やお問い合わせをしてくれた見込み顧客に対して段階的にアプローチしていき、購買意欲を醸成し購入するまでの背中を押す役割も担います。
見込み顧客は、商品やサービスの存在を知ってから、すぐに購入するわけではありません。他製品と比較・検討して、購入するものを選びます。そのため、比較・検討の時期に、自社商品の存在を忘れられてしまわないように、ほど良い距離を保ちながらコミュニケーションを取る必要があります。
見込み顧客と良好な関係を築き、ロイヤリティを獲得することもコミュニケーションマーケティングの役割です。
売上を伸ばすためには、顧客単価を上げるだけでなく販売回数や販売量を増やすことが大切です。
1人顧客から生涯得られる利益額を上げるためには、継続して取引してもらう必要があります。そのため、定期的に既存顧客とコミュニケーションをとり、良好な関係を構築する必要があります。
既存顧客と良好な関係を築けば、クロスセル(別の商品を購入してもらうこと)やアップセル(ランクの高井商品をしてもらうこと)も期待できるでしょう。このような効果も見込めるため、コミュニケーションマーケティングが注目されているのです。
企業と消費者の双方間で行うマーケティングコミュニケーションが求められる背景には、以下のようなものがあります。
ここでは、それぞれの背景について詳しく解説します。
SNSの普及で企業と消費者の双方間のコミュニケーションができるようになりました。
ICT総研が実施した「2022年度SNS利用動向に関する調査」では、国内のSNS利用者は8,270万人を超えており、SNS普及率は82%にも及びます。また、商品購入の決め手は「SNSで偶然見つけたクチコミ」とSNSの影響を受けるユーザーが半数にも及んでいるのです。
近年、SNSで新商品リリースの情報を拡散して知名度を上げたり、購買促進に成功して売上を伸ばしたりなどの事例も増えてきています。
SNS上で商品情報を拡散してもらえれば、ビジネスが加速させることも可能です。このような効果が期待できるSNSの普及により、コミュニケーションマーケティングが求められるようになってきました。
従来は企業からの売り込みで商品を購入するアウトバウンド営業が主流でしたが、現在は売り込みに嫌悪感を抱く消費者が増えています。その理由は、インターネットの普及により消費者が商品に関する情報を収集できるようになったからです。
消費者が、インターネットを活用して欲しい商品の比較・検討ができるようになりました。また、多くの情報が収集できるため、自分の興味・関心のあるものを優先的に見ていきます。
このような比較・検討する際に、自社商品の存在を忘れられないように定期的にコミュニケーションを取らなければいけません。また、企業側が認知している売れる商品と、消費者が欲しい商品にギャップが生じないようにコミュニケーションを取る必要があります。
このように、消費者の購買プロセスの変化によって、コミュニケーションマーケティング求められるようになりました。
オフライン広告だけでなくオンライン広告が登場し、SNSが普及するなどPR手法が多様化しています。従来は企業側が消費者に対して、一方的に広告配信する手法が一般的でした。
しかし、などが出てきており、ユーザー参加型のコミュニケーションが取りやすくなってきました。ユーザー参加形のコミュニケーションで、商品情報を広めてもらえれば、認知度が拡大できます。このようなPR手法の登場により、コミュニケーションマーケティングが注目され始めました。
マーケティングコミュニケーションの必要性は理解して頂けたと思いますが、代表的な手法は以下の通りです。
ここでは、マーケティングコミュニケーションの手法について詳しく解説します。
広告には、テレビや屋外などのオフライン広告とインターネットやSNSのオンライン広告があります。潜在層から顕在層まで幅広い層に商品の魅力を訴求でき、商品の概要を知ってもらい購入を促すために利用します。
広告運用で成果を出すためには、クロスメディア戦略が欠かせません。クロスメディア戦略とは、さまざまな広告を活用して総合的に販売を促進していく戦略をいいます。例えば、リスティング広告で顕在顧客を獲得して、リターゲティング広告で取りこぼした顕在顧客を獲得するなどの手法があります。
販売促進とは、自社商品や自社サービスに付加価値を付ける手法です。具体的に説明すると、ノベルティ進展やクーポン、試供品の配布などをして付加価値を付けます。
近年ではSNS上で販売促進キャンペーンが増えてきました。例えば、TwitterではRT&フォロワーキャンペーン、LINEでは友だち追加キャンペーンが行われています。このような販売促進で双方間のコミュニケーションを楽しむことができます。
PR・広報とは、業界誌やビジネス誌、新聞、テレビなどに自社の取り組みを知らせる取り組みをいいます。PR・広報の役割は、情報発信を通じてステークホルダーと望ましい関係を構築することです。
例えば、市場が急成長している場合は、情報発信することで多くの反響が得られます。読者からの反響に1件1件回答していけば関係を構築していけます。
下記の記事でBtoBの広告について詳しく解説しています。
・BtoB企業の広報活動を成功させる5つのコツを失敗&成功事例から学ぼう
ダイレクトマーケティングは、メールやチャットで相手とコミュニケーションをとり、良好な関係を構築していくマーケティング手法です。
ターゲットを絞り込み、個別にコミュニケーションを取れるため、相手の悩みを解決する方法など提案すれば響きます。既存顧客と良好な関係を構築したい場合に効果を発揮する手法です。
展示会やセミナーなどイベントを開催すれば、見込み顧客と接触できます。その場で商品を体験してもらったり、不明点を質問してもらえたりすることがイベントの魅力です。
また、展示会やセミナーの見込み顧客に反応を見ながら、顧客ニーズを分析して商品開発やサービス改善のヒントを得る場としても機能します。対象を限定したイベントを開催すれば、より密接なコミュニケーションが取れます。
人的販売とは対面コミュニケーションをいいます。新型コロナウイルス感染拡大してからは、インサイドセールスが人的販売の手法として注目を浴びています。インサイドセールスとは、商談化する前の顧客に有益な情報を提供し良好な関係を築いていくために行うものです。
定期的にコミュニケーションをすることで存在を忘れられずに済み、ニーズが顕在化したときにお問い合わせがもらえます。
マーケティングコミュニケーションのやり方は以下の通りです。
ここでは、各手順について詳しく解説します。
最初にターゲットを定めましょう。その理由は、どのようなターゲットに商品を販売したいかを定めないと、質の高いコミュニケーションができないためです。コミュニケーションは「どう伝えるか」も大切ですが「誰に伝えるか」も重要です。
ターゲットを定めるときは、人物像となるペルソナを設定しましょう。ペルソナとは細かく人物像を描くことをいいます。
下記の記事でペルソナについて詳しく解説しています。
・ペルソナとは?メリットや作成手順をたった4ステップで解説!
次にコミュニケーションの目標を決めていきましょう。コミュニケーションの目標は数値で示せるものを設定して、効果検証できるようにすることが大切です。
コミュニケーションマーケティングによる売上金額、商品紹介ページのPV数、エンゲージメント数など数値化できる目標を設定してください。
次に広告予算を確保します。売上の中から広告費に充てる一定の割合を決めていきます。月間売上の目標額に広告費の割合をかけて、広告予算を算出します。例えば、広告費の割合が5%で月間売上の目標を1000万円の場合の月額の広告予算は50万円です。
ターゲットや目標、自社商品の強みから最適なコミュニケーション手法を選択します。下記の具体例をまとめたので参考にしてみてください。
広告 |
新サービスを多くの人に知ってもらう |
販売促進 |
SNSユーザーに商品情報を拡散して認知度拡大を狙う |
PR・広報 |
市場が急成長しているため情報提供して反響を獲得する |
ダイレクトマーケティング |
既存顧客と良好な関係を築くためのコミュニケーション |
イベント |
商品開発やサービス改善の役立つ情報を収集する |
人的販売 |
比較・検討段階の見込み顧客と良好な関係を築くためのコミュニケーション |
マーケティングコミュニケーションの目標と結果を照らし合わせて効果検証をします。目標が達成できた場合は、更に数字を伸ばすために追加できる方法がないかを検討しましょう。
目標達成できなかった場合は、どのような箇所が原因で目標達成できなかったか課題を洗い出して改善していきます。
最後にマーケティングコミュニケーションの成功事例をご紹介します。
SHARP株式会社は大手の電機メーカーです。Twitter公式アカウントにはフォロワーが83.8万人(※2023年1月17日時点)います。多くのフォロワーを獲得するために、情報発信のタイミングを大切にしています。
例えば、エアコンの新商品の情報を、寒い時間帯にツイートすることで共感を集めているのです。ニュース性を持つかどうか、ツイートがバズるかどうかは世間の反応次第です。SHARP株式会社は、世間の反応を見ながらSNSを上手く活用している成功事例として注目されています。
出典元:『株式会社大創産業 公式ホームページ』
株式会社大創産業は、100円ショップのダイソー(DAISO)を運営する会社です。国内に約3,300店舗、世界26か国に約2,000店舗を展開しています。同社は活発にマーケティングコミュニケーションを行っていることで有名です。
例えば、店内での写真撮影を許可しており、ダイソーの新商品が話題にのぼるように仕掛けています。これまで、コスパ最強の美容液などがSNSで話題になりました。
また、ユーザーが楽しめる「ダイソー商品総選挙2022」なども開催。約7万6,000点の商品の中の人気商品を決定する決定権がユーザーに付与されています。このような取り組みで売上を堅調に伸ばしています。
出展元:『マイネ王公式ホームページ』
株式会社オプテージは、格安スマホと格安SIMサービス「mineo(マイネオ)」を提供している会社です。mineoでは「マイネ王」というコミュニティサイトを用意しており、掲示板で何でも質問できるのに際絵、mineo運営事務局に対してサービスに関して意見が伝えられるようになっています。
この施策の目的は、mineoのサービスをユーザーと共に創ることです。ユーザーの投稿内容により実現したサービスもあるなど、コミュニケーションマーケティングの成功事例の参考になります。
コミュニケーションマーケティングは、SNSの普及や消費者の購買プロセスの変化により求められるようになってきました。コミュニケーションマーケティングを行い、顧客と良好な関係を築ければ、ニーズが顕在化したときに自社商品を購入してもらえます。
この記事では、コミュニケーションマーケティングのやり方まで紹介したため、これを機会に取り組んでみてください。