インサイドセールスは社内から電話やメールで見込み客、または顧客とコミュニケーションをとる仕事です。コロナ禍で対面営業が大きく制約されるなか、日本企業の多くがインサイドセールス部門を強化、または新しく立ち上げようとしています。
まず、従来のテレアポとは業務がどう違うのかを確認します。以下3点が挙げられます。
従来のテレアポではアポイントがとれたリードのみを営業部門に引き継ぎ、その他の電話履歴などは共有されませんでした。しかし、インサイドセールスはすべての履歴を登録し、マーケティングやフィールドセールスと共有します。そのうえで、現在アポイントが取得できないリードについても長期でフォローするシナリオをチームで策定し、実行します。
図はSalesforce社で確立され、今では広く知られている営業プロセスのモデルです。
見込み顧客を獲得すること、見込み顧客に自社の情報を届けて、興味・関心の度合いの高い有力な見込み客へとナーチャリング(育成)します。
マーケティング部門から引き渡された興味・関心の高いリードに対して電話・メール・ビデオ通話などでコミュニケーションをとり、商談可能なリードに育成します。
インサイドセールス部門から商談可能として引き渡されたリードと商談を進め、契約をします。
契約後の顧客と継続的にコミュニケーションをとります。
インサイドセールスは隣接するマーケティング部門、フィールドセールス部門はもちろん、カスタマーサクセス部門とも密接に連携しながら業務を進めます。部門間の分業と情報共有、それに協業によって営業活動全体の生産性を上げることが目的です。
参考記事:インサイドセールスとフィールドセールスの違い・役割を整理 組織連携のコツも解説
インサイドセールス部門では、リードとコミュニケーション履歴をすべてMA(マーケティングオートメーション)ツールやSFA(営業支援ツール)によってデータ化するのが一般的です。
データが蓄積されることにより、より効率のよいアプローチの方法を見つけ出せます。個人の勘や経験に頼らず、データによって手法を決定していきます。
参考記事:インサイドセールスツール6種!目的別のおすすめ理由|SFA、MA、CTI、ABM、名刺管理…必要なのはどれ?
従来のテレアポでは「どれだけアポイントがとれるか」がKPIでした。しかし、インサイドセールスが意識するのは商談化数、商談化率、受注率、受注額、初訪問失注率などのKPIと、マーケティングと営業の全体に共通で売上拡大などのKGIです。
参考記事:インサイドセールスのKPI│目標設定と成果につなげるポイントとは?
参考記事:インサイドセールスとテレアポの違いとは?インサイドセールスが注目された理由も解説
インサイドセールス部門が具体的にどんな業務を行うか紹介する前に知っておきたいのは、企業や個々の現場によって実際の業務はかなり違うということです。
まず、インサイドセールスがマーケティング部門に所属するか、営業部門に所属するか、それとも独立した部門になっているかという3パターンがあります。マーケティング部門に所属していればマーケティング寄り、営業部門に所属していれば営業活動に近い業務となります。また、インサイドセールスと他部門の人的バランスによっても動き方は異なる上に、SDRかBDRかなどによってもやり方は変わります。
インサイドセールスで成果を上げている企業の事例をみても、個別の業態や顧客ターゲットに合うスタイルを確立させて、それぞれ異なる手法をとっています。
以下で紹介する手法はその一例となります。
インサイドセールスの業務でメインとなるのは電話でのコミュニケーションです。電話の事前、事後に何をするかも重要です。
インサイドセールスには会話の展開ごとにどう話すかの「トークスクリプト」が用意されています。失敗なく、そして最もよい成果を引き出すためにトークスクリプトを使いこなしましょう。
電話連絡をする前に、「導入事例」「業界レポート」など個々のリードに適した資料を選び用意します。また、会話する相手の情報をできるだけ集め、リードの課題を想像してシナリオを組み立ててみることも必要です。
通話後には、リードへ追加情報を提供するメール送信や、SFA、MAなどへの入力といったACWがあります。これらは次へつなげるため、そしてチームで情報共有するための大切な作業です。
SDRとはsales development representativeの略で、SEOやコンテンツマーケティングによるWebサイト訪問による問い合わせ・資料請求等で獲得したリードや、セミナー・ウェビナーにより獲得したリードへのセールスを指します。リードの側から近づいてくるのでpull型リード(インバウンド型のリード)と呼ばれます。
反響を最初に受け取るのはマーケティング部門で、そこで新規のリードであることを確認し、購入意欲がある程度高いと判定される場合はインサイドセールスに引き渡され、インサイドセールスから電話でアプローチします。
すぐに対応すべきリード以外は、マーケティング部門と連携してホットリードへの育成のためのナーチャリングを実施します。具体的には、
などが含まれます。
BtoCでは反響を受け取ったときから5分以内に電話が鉄則となっていますが、今はBtoBでも5分以内の電話が望ましいとされています。5分以内であれば情報を送信した担当者が在籍している可能性が高く、最もタイムリーにコミュニケーションをとることができます。また、一括資料請求のサービスを利用している場合はいっそう、スピーディーな対応が望まれます。
ある程度興味・関心が高くなってきたリードに対しては、営業部門と連携しながら適切なタイミングでBANTのヒアリングをします。BANTとは以下の4点です。
さらに「Competitor:競合」のCを加えて、BANT+Cをヒアリングする企業も増えています。
BDRとはbusiness development representativeの略で、push型つまり企業側からの新規のアプローチを行うセールスを指します。対象はpush型のリード(アウトバウンド型のリード)ですが、インサイドセールスが実施するBDRは従来型の「新規テレアポ」とは以下2点で違います。
第一に、ターゲットは大企業であるという点です。企業から見てぜひアプローチしたいとみなす大企業はBDRとなります。
第二に、フィールドセールス部門となどと連携しながらシナリオを作成し、それに沿ってアプローチするという点です。1度の電話で反応が悪かったら終了ではなく、そこからどう進むかをあらかじめ考えます。
フィールドセールス部門と連携して、顧客のペルソナなどからターゲットとなる大企業を選定します。
ターゲット企業の組織、事業などできるだけ情報を集めて戦略を練ります。
大企業に対するアプローチでは、直接電話をするほか、キーマンへDMを送る「CXO(Chief X Officer)レター」という方法をとることもあります。
対象が大企業であるときはBANTのヒアリングは必ずしも必要ではなく、キーマンと電話で話ができたときは関係の構築に主眼をおきます。
インサイドセールスの実務は、現場によってかなり違い、SDRかBDRか、またターゲットによっても違います。
いずれの場合もマーケティングやフィールドセールスと情報共有・連携しながら、効率よく進めることが大切です。