チャーンレートとは|種類や平均値、算出方法、改善のポイントをまとめて解説

チャーンレートとは|種類や平均値、算出方法、改善のポイントをまとめて解説

SaaSやサブスクリプションサービスの重要な指標である「チャーンレート」。

チャーンレートを分析することで原因や顧客行動を把握できるため、サービスの改善に活かすことができます。

継続的に売上を出していくためにも、チャーンレートをしっかり理解することが重要です。

当記事ではチャーンレートの種類や平均値、算出方法、改善のポイントをまとめて解説します。

【1】チャーンレートとは

チャーンレート(Churn Rate)は日本語で「解約率」「退会率」を意味し、一定期間内における自社サービスの利用を停止してしまったユーザーの割合を表しています。

チャーンレートを分析することで、改善に向けた具体的な施策を立てることが可能です。

サブスクリプションサービスを提供する企業にとって、チャーンレートは売上に直接関係するため、チャーンレートをいかにして下げるかが重要な課題となっています。

【2】チャーンレートの平均・目安

チャーンレートの平均値は、1か月あたり3%〜10%というのがひとつの目安と言われています。

ただしチャーンレートの平均は業種によって異なるため注意が必要です。

Recurly Research(リカーリー・リサーチ)の調査によると、業種別での平均チャーンレートは以下のようになっています。

  • SaaS:4.79%
  • メディア・エンタメ:5.23%
  • 教育:9.61%
  • 定期購入:10.54%
  • コンテンツ/動画配信:10.01%
  • BtoC物販:9.62%
  • BtoCサービス:7.49%
  • BtoBサービス:6.25%
  • ヘルスケア:7.55%
  •  IoT:5.88%

自社の業種やサービスと照らし合わせ、数値が上回っているかどうかを確認してみてください。

数値を上回っている場合、何らかの対策を講じる必要があるかもしれません。

【3】チャーンレートの種類

チャーンレートは大きく以下3つの種類に分類されます。

  • カスタマーチャーンレート
  • アカウントチャーンレート
  • レベニューチャーンレート

1.カスタマーチャーンレート

カスタマーチャーンレートは顧客数をベースにして算出するチャーンレートです。

一定期間内に解約した人だけでなく、有料会員から無料会員にダウングレードした人も解約の対象となります。

2.アカウントチャーンレート

アカウントチャーンレートはサービス(サブスクリプションやメルマガなど)の登録数をベースにして算出するチャーンレートです。

アカウントは会社や家族単位で共有することもあるため、利用数とアカウント数が一致するとは限りません。

そのため、ユーザー単位で分析するカスタマーチャーンレートとは違うチャーンレートとして扱われます。

3.レベニューチャーンレート

レベニューチャーンレートは収益をベースにして算出するチャーンレートです。

収益をベースに算出しているため、売上や価格別の解約率の把握に役立ちます。

複数のサービスを展開している場合はこのチャーンレートも算出しておきましょう。

さらにレベニューチャーンレートは、

  • グロスレベニューチャーンレート
  • ネットレベニューチャーンレート

の2種類に分類されます。

グロスレベニューチャーンレートは、一定期間内に発生した解約やダウングレードによる損失金額をベースに算出するチャーンレートです。

ネットレベニューチャーンレートは解約やダウングレードによる損失だけでなく、サービスのアップグレードやクロスセルによって得た利益も含めた金額の割合を示すチャーンレートになります。

また、ネットレベニューチャーンレートのみ計算結果がマイナスになることがあります。

これは、既存顧客から新規収益が、解約やダウングレードによる損失を上回っているケースです。このようなケースを「ネガティブチャーン」といいます。

ネガティブチャーンの達成はロイヤルカスタマーの増加や企業の成長を示しており、良い傾向と言えます。

【4】チャーンレートの改善が重要な3つの理由

なぜチャーンレートの改善が重要なのでしょうか?チャーンレートの改善が重要である理由は以下の3つが挙げられます。

  • 売上に直接関係するため
  • 既存顧客のLTV向上につながるため
  • 新規顧客獲得のコストを抑えられるため

それぞれ詳しくみていきます。

1. 売上に直接関係するため

チャーンレートは売上に直接関係します。売上を安定させるためにも、ユーザーにサービスを継続的に利用してもらわなければいけません。

解約した顧客が増えると売上が下がってしまい、赤字になってしまう可能性もあります。

2. 既存顧客のLTV向上につながるため

チャーンレートが改善されれば、LTVの向上にもつながります。

LTV(Life Time Value)は顧客生涯価値と訳され、顧客から生涯にわたって得られる利益を示す数値です。

チャーンレートをチェックし解約理由を分析することで、自社の商品・サービスの改善点やユーザーニーズの把握に役立ちます。

商品・サービスに反映できれば顧客満足度の向上につながり、LTVが高まります。

3. 新規顧客獲得のコストを抑えられるため

新規顧客獲得コストの抑制もチャーンレートを改善する理由の一つです。

新規顧客を獲得するためには、ある程度の広告費や人件費を投入する必要があります。

フレデリック・F・ライクへルドの「1:5の法則」によると、新規顧客に販売するコストは、既存顧客へ販売するコストの5倍かかるとされています。

既存顧客が減らず安定した利益が得られれば、新規顧客獲得にかけるコストを抑えることができます。

ただし、新規顧客獲得も企業を成長させるための重要な要素であるため、バランス良くアプローチすることが重要です。

【5】チャーンレートの算出方法

ここでは各チャーンレートの算出方法について解説していきます。

1.カスタマーチャーンレートの場合

カスタマーチャーンレートの場合、以下の方法で算出できます。

「カスタマーチャーンレート=一定期間内に解約した顧客数÷期間前の総顧客数×100(%)

【例】期間前の顧客数が1,000人、期間内に50人の顧客が解約した場合

(50÷1,000)×100=5%

2.アカウントチャーンレートの場合

アカウントチャーンレートの場合、以下の方法で算出できます。

「アカウントチャーンレート=一定期間内に解約したアカウント数÷期間前の総アカウント数×100(%)」

【例】期間前のアカウント数が1,000人、期間内に100個のアカウントが解約した場合

(100÷1000)×100=10%

3.グロスレベニューチャーンレートの場合

グロスレベニューチャーンレートの場合、以下の方法で算出できます。

「グロスレベニューチャーンレート=期間内の解約・ダウングレードによる損失額÷期首の定期収益額×100(%)」

【例】期間内の解約・ダウングレードによる損失額が10万円、前月の月次収益が100万円の場合

(10万円÷100万円)×100=10%

4.ネットレベニューチャーンレートの場合

ネットレベニューチャーンレートの場合、以下の方法で算出できます。

「ネットレベニューチャーンレート=(期間内の解約・ダウングレードによる損失額-当月のアップセルなどで得られた収益)÷前月の月次収益×100(%)」

【例】期間内の解約・ダウングレードによる損失額が10万円、当月のアップセルなどで得られた収益が15万円、期首の定期収益額が100万円の場合

(10万円−15万円)÷100×100=−5%

前述の通り、ネットレベニューチャーンレートの計算結果がマイナスの場合、収益が上がっていることを示しています。

【6】チャーンレートが上がってしまう(下がらない)3つの要因

ここではチャーンレートが上がってしまう3つの要因を解説します。

該当していないか、チェックしてみてください。

1. 商品・サービス自体のクオリティが低いから

ユーザーは魅力やメリットを感じて、商品・サービスを利用します。

しかし、商品・サービス自体の品質が悪いと継続して利用してもらえず、チャーンレートを上げる要因となってしまいます。具体的な理由には以下のものが挙げられます。

  • 導入したものの、あまり活用できなかった
  • 競合他社の製品でよりコストが安い、より性能が良いものがあった
  • 継続利用するための維持費が確保できなくなった

ユーザーによって解約理由は様々。解約理由を解決できれば、今後の解約防止に繋がります。

ユーザー解約理由をしっかりとヒアリングしておきましょう。

2. 市場のニーズが減少したから

トレンドの変化等に伴い、ニーズがなくなった可能性も考えられるでしょう。

ユーザーのニーズは絶えず変わります。

最新の市場情報や顧客の動向を把握しておかないと、いつの間にか利用顧客が激減してしまう事態に陥りかねません。

ネットリサーチやインタビューなどを定期的に行い、常に市場情報や顧客の動向を把握しておくことが大切です。

3. カスタマーサービスが低質だから

チャーンレートを上げてしまう要因は商品・サービスだけでなく、カスタマーサービスにもあります。

売上を安定させるには、顧客との信頼関係を築いていくことが重要です。

どんなに商品・サービスに満足していても、サポート体制や購入プロセスが整っていないと、顧客満足度が下がってしまいます。

【7】チャーンレートを改善する方法

売上を安定させるためにも、チャーンレートはなるべく抑えたいものです。

チャーンレートは自社の取り組み次第で改善することができます。

ここではチャーンレートを改善する3つの方法を紹介します。

1. サービス・商品の訴求方法を改善する

チャーンレートを改善するためには、サービス・商品の訴求方法を見直すようにしましょう。

どれだけ良い商品・サービスだとしても、顧客側でメリットを感じなければ意味がありません。

サービス・商品を訴求するためには、ユーザー目線で考えることが大切です。

  • どのようなユーザーが商品・サービスを利用するのか?
  • 自社の商品・サービスを利用することで、どのようなベネフィットがあるのか?
  • 自社サービスと他社サービスの違いは何か?

など洗い出し、再度訴求方法を見直してみましょう。同じ商品・サービスであっても訴求方法を変えるだけで、印象は大きく変わります。

また、定期的なヒアリングやアンケートを実施し、ユーザーの意見を取り入れることも有効です。客観的意見を取り入れることで、自社目線では気づかなかった発見を得られることもあります。

2. 価格・料金プランの見直しを行う

市場ニーズに合った価格やプランを用意することが大切です。競合と比較しサービスと料金のバランスが取れているかを確認しましょう。

3. 顧客満足度の向上を図る

顧客満足度の向上はチャーンレートの改善につながります。

スピーディーかつ丁寧に対応できれば、ユーザーは企業に対して信頼を抱いてくれるでしょう。

カスタマーサービスやカスタマーサクセスの体制を徹底し、顧客ごとにコミュニケーションを最適化していきましょう。しかし、事業規模が大きくなるにつれて、顧客対応も複雑になりがちです。

顧客対応を効率化していきたいのであれば、MAやCRMなどツールの導入を検討しましょう。

顧客情報を一元管理することができるため、迅速な個別対応を実現できます。ユーザーの不安を解消し満足度向上が期待できるでしょう。

【8】まとめ

今回の記事ではチャーンレートの種類や平均値、算出方法、改善のポイントをまとめて解説しました。チャーンレートは企業の売上を維持・向上するために重要な指標です。

チャーンレートが上がってしまうのには原因があり、分析することで自社商品・サービスの向上につなげることができます。

チャーンレートを分析し、洗い出された顧客のニーズを参考に、自社の施策につなげていきましょう。

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