【1】One to Oneマーケティングとは
One to Oneマーケティングとは、顧客ひとり一人に最適なコミュニケーションを実施するマーケティング活動のことです。近年、大きな注目を集めるマーケティング手法ですが、1994年に出版されたドン・ペパーズとマーサ・ロジャーズによる書籍「ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略」の中で、One to Oneマーケティングは登場しています。
One to Oneマーケティングの目的とは、顧客ひとり一人に適したタイミングで最適なメッセージを伝え、顧客との関係性や顧客ロイヤルティを育成し、顧客生涯価値を高めることです。そして、顧客に最適な体験を提供するためには、深い顧客理解が欠かせません。
マスマーケティングとの違い
マスマーケティングとは、大勢のターゲットを対象に展開するマーケティング施策のこと。代表的な例が、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアでの広告活動です。マスマーケティングでは、自社製品と関連性の低いユーザーにまでリーチするため、費用対効果の悪化やブランド嫌悪などにつながるリスクがあります。
一方、One to Oneマーケティングはマスマーケティングほど多くのユーザーにリーチできませんが、個別に最適化されたメッセージを伝えられるため、マスマーケティングのデメリットを解消しながら、コンバージョン率の改善などを見込めます。
【2】One to Oneマーケティングが重要な背景
One to Oneマーケティングが重要視される背景として、消費者の購買行動が変化したことがあげられます。かつての消費者は、自身で情報収集する手段がほぼなかったため、テレビや新聞などのマスメディアを通して受動的に情報を受け取っていました。
しかし、インターネットの発展やスマートフォンの普及などにより、消費者は能動的に情報収集できるようになったのです。また、日常的に触れる情報量が膨大になったため、消費者は受け取る情報を選別するようになり、マスメディアの影響力が衰えています。
このような背景を受けて、各顧客にとって最適なタイミングで、最適なメッセージを伝えられるOne to Oneマーケティングの重要性が高まっているのです。
【3】One to Oneマーケティングのメリット
One to Oneマーケティングのメリットは下記3つです。
- コンバージョン率の改善
- 顧客情報の収集
- 顧客単価アップ
以下では、各メリットの詳細について解説します。
1.コンバージョン率の改善
Web広告や自社サイトなどで集客はできているものの、コンバージョン率が低い場合は、One to Oneマーケティングに取り組んでみるといいかもしれません。
アクセンチュアの調査では、消費者の91%がパーソナライズしたオファーやレコメンドを提供するブランドで購入すると判明。One to Oneマーケティングでは、見込み客ひとり一人に適したメッセージを届けられるため、コンバージョン率の改善を見込めます。
2.顧客情報の収集
顧客情報を収集できれば、データドリブンに基づいた施策展開ができます。しかし、なかなか顧客情報を収集できないと悩むマーケティング担当者は多いのではないでしょうか。One to Oneマーケティングを推進すれば、顧客情報を効率よく得られます。
Wunderkindの調査によれば、消費者の90%がオファーや容易なショッピング体験と引き換えに、進んで自身の行動データを企業に渡すと回答しているのです。One to Oneマーケティングを展開して、顧客情報を提供してもらう代わりに、顧客にとって価値あるオファーや体験を提供しましょう。
3.顧客単価アップ
SaaSビジネスの普及や縮小する国内市場の影響により、新規顧客の獲得ではなく、既存顧客の維持と単価拡大の重要性が増しています。One to Oneマーケティングは、既存顧客にもリーチするため、アップセルやクロスセルも見込めます。
例えば、キャンプ目的でテントを購入した顧客に、メールでキャンプを楽しむコツを配信し、様々なキャンプ用品と使い方を見せます。顧客がWebサイトに再訪問した際、メールで紹介した製品をレコメンドすれば、クロスセルをしてもらえる確率が高いです。
このようにOne to Oneマーケティングの推進により、顧客単価やLTV(顧客生涯価値)、顧客ロイヤリティの向上を見込めます。
【4】One to Oneマーケティングの手法
One to Oneマーケティングの代表的な手法は以下の通りです。
- リターゲティング広告
- レコメンデーション
- メール
- ダイレクトメール
- LPO
以下では、各手法の詳細について解説します。
1.リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、自社サイトの訪問ユーザーを追跡し、再度広告を配信する手法のことです。自社サイト訪問ユーザーは、製品サービスの購入に大きな興味を持っています。しかし、競合他社と比較するために、購入せずに離脱することは珍しくありません。
この比較検討段階における顧客に、リターゲティング広告で自社を想起させることで、購入や問い合わせへつながる確率が高まるのです。しかし、SafariやFireboxはサードパーティクッキー(ユーザーのWeb行動を保存した情報)の利用を制限しており、国内ブラウザのシェア率No1のChromeも段階的にサードパーティクッキーを廃止すると発表しています。
今後はGoogleやYahoo!などの広告プラットフォームが提供するリターゲティング広告の精度は大幅に低下するため、自社で顧客情報を蓄積し、それをリターゲティング広告に反映させる必要があります。
2.レコメンデーション
最も身近なOne to Oneマーケティングといえば、製品サービスのレコメンデーションでしょう。顧客の購入製品や閲覧履歴、レビューなどをもとに、顧客の興味関心が高い製品を紹介します。レコメンデーションを上手く使う企業といえばAmazon。
出典:Amazon
上記画像は、筆者の電子書籍購入履歴や読書履歴に基づいて表示されたレコメンデーションです。Amazonには膨大な製品が出展されているため、ユーザーは自身に適した製品を見つけるのは困難です。しかし、レコメンデーション機能があることで、すぐに関連性の高い製品を見つけられ、顧客のショッピング体験を容易にしています。
レコメンデーションを使えば、顧客は何度も製品サービスを購入してくれるため、LTVや顧客単価の向上を見込めます。
3.メール
自社サイトやLP、セミナーなどで連絡先を提供してくれた顧客には、メールによるOne to Oneマーケティングで、信頼関係や購買意欲の育成をしましょう。また、BtoCはもちろん、BtoBにおいても有効なのがトリガーメール。
トリガーメールとは、特定の行動を取った顧客に自動で送信するメールのことです。Wunderkindの調査では、多数のユーザーに一斉配信するメールと比較すると、トリガーメールは、
- 送信ごとに24倍の収益を生み出す
- 開封率2.2倍、クリック率2.1倍、コンバージョン率4.1倍高い
と判明しています。
One to Oneマーケティングにおけるトリガーメールの例としては、ユーザーの誕生日を祝う特別オファーやカート放棄を知らせるメール、しばらくログインしないユーザーに送信する通知メールなどです。
トリガーメールを使えば、見込み客との関係性や購買意欲を醸成でき、効果的にコンバージョンにつなげられます。
4.ダイレクトメール
ダイレクトメールとは、企業から個人もしくは法人に送信する商品案内やカタログなどを送信する広告のことです。ダイレクトメールの実施には、印刷費や送料などがかかりますが、Eメールでは表現できない特別感を醸成できます。また、Eメールとは異なり、確実に顧客に目にしてもらえるのも特徴です。予算が限られている場合は、優良顧客向けにダイレクトメールを送信するのがいいでしょう。
5.LPO
LPO(Landing Page Optimization/ランディングページ・オプティマイゼーション)とは、LPを訪問ユーザーのニーズに合わせて最適化し、コンバージョン率を高める施策のことです。離脱率やコンバージョン率が悪かったり、特定の流入経路の離脱率が高かったりする場合などに有効。
LPOツールやパーソナライゼーションツールを活用することで、デバイスやユーザー属性などに基づいて最適なLPを表示できるため、コンバージョン率の改善を見込めます。
【5】One to Oneマーケティングの実施手順
One to Oneマーケティングは下記の手順で進めます。
- STEP1:顧客データの収集
- STEP2:ペルソナの作成
- STEP3:カスタマージャーニーマップの作成
- STEP4:One to Oneマーケティングの実施
各手順の詳細についてみていきましょう。
STEP1:顧客データの収集
One to Oneマーケティングの成功には、深い顧客理解が欠かせません。しかし、「自社の顧客はこんな課題があるはずだ」のような思い込みは、施策混乱の原因となります。顧客理解をする際は、必ずデータ分析をする必要があります。
まずは自社で蓄積した顧客データを分析し、顧客がどのような課題を抱えていて、どのようなニーズを持っているのかを正確に把握するようにしましょう。また、ユーザーインタビューやアンケート調査、営業やカスタマーサクセスなど顧客と直接コミュニケーションをとる部門へのヒアリングなども、顧客理解に有効なソースです。
自社内に十分な顧客データがない場合は、まずは顧客データを獲得する施策に注力しましょう。
STEP2:ペルソナの作成
顧客データの収集と分析をしたら、課題や悩みなどをペルソナに落とし込みます。ペルソナとは、自社商材の典型的なユーザー像であり、一人の顧客をイメージできるまで具体性を高めます。
例えば、「東京都に住む35歳男性」ではなく、「田中一郎。東京都に住む35歳男性。SaaS系スタートアップのマーケティング部に所属。LPのコンバージョン率が悪いのが悩み」のようにデモグラフィクスとサイコグラフィクスを詳細に設定します。
ペルソナは顧客の一次情報に基づいて作成されなければいけません。担当者の主観や願望が混じったペルソナは、実在しない顧客をモデルにしたものであり、試作混乱の原因となるためです。だからこそ、One to Oneマーケティングは顧客データを収集することから始めなければいけません。
また、必要に応じてペルソナは複数作成しましょう。例えば、無事に顧客化したペルソナだけではなく、顧客化しなかったペルソナの作成をすることで、自社の課題や改善点を把握できます。
ペルソナについてはこちら!
STEP3:カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーマップとは、顧客の購買プロセスにおける課題や感情、行動、タッチポイント、自社が展開する施策などをまとめた表です。ペルソナのカスタマージャーニーマップを作成することで、各フェーズにおけるペルソナの課題や感情などが可視化でき、施策の最適化を実現できるようになります。
カスタマージャーニーの詳細はこちら!
STEP4:One to Oneマーケティングの実施
ペルソナとカスタマージャーニーマップの作成により、顧客理解を深めたら、One to Oneマーケティングを推進しましょう。例えば、カートに製品を入れたものの購買に至らなかったユーザーは価格で悩んでいると判明しているなら、割引クーポン付きのメール送信や再度訪問した際にポップアップでオファーを提案するなどの施策が考えられます。
また、One to Oneマーケティングが初めからうまくいく確率は低いため、定期的にデータを確認し、分析と改善を繰り返しましょう。データ分析の際は、数字から顧客をイメージすることを心がけてください。
「なぜ、このページで離脱したのだろうか」のように顧客視点でデータを見ることで、インサイトや効果的な改善策が思いつきます。PDCAを回すことで、One to Oneマーケティングの精度が徐々に高まり、成果へとつながるのです。
【6】One to Oneマーケティングの推進にはMAツールが必須
One to Oneマーケティングを推進するには、ツールが欠かせません。特に顧客数が多い場合、ツールを使わなければ、手動でのメッセージ配信やコンテンツ作成などが必要となり、顧客に最適なタイミングでアプローチするのはほぼ困難です。
数あるマーケティングツールの中でも、おすすめなのがMA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)ツール。その名のとおり、マーケティング業務の効率化・自動化を実現するツールであり、顧客データ管理やメールマーケティング、リードスコアリング、レポート作成・分析機能などOne to Oneマーケティングに必要な機能がそろっています。
しかし、単にMAツールを導入するだけでは、One to Oneマーケティングは成功しません。MAツールの活用においては、シナリオ設計が欠かせません。カスタマージャーニーマップを基に、どのような行動を起こした顧客に対して、どのようなコンテンツを発信するのか決めましょう。
初めてシナリオ設計する場合は、簡単なシナリオ作成から始め、徐々に細かいシナリオを作成するようにしましょう。
【7】国内企業によるOne to Oneマーケティング成功事例
最後にOne to Oneマーケティングに成功した国内企業の事例を2つご紹介します。
1.世田谷自然食品
世田谷自然食品は健康食品や自然食品を中心にEC販売をする企業であり、定期販売のビジネスモデルが主軸です。同社は顧客ひとり一人に最適なアプローチをするため、One to Oneマーケティングに取り組みます。
具体的な施策は、メールマーケティングです。既存のメール配信ツールと連携できるMAツールを導入。MAツールで顧客セグメント別に分類したメール配信リストを作成し、リストをメール配信ツールに取り込んで送信します。また、顧客ごとの開封やクリックなどの行動データをMAツールと紐づけることで、顧客行動の詳細な分析を実現。
MAツールの導入により、各顧客に最適なメール配信ができるようになっただけではなく、業務効率の大幅な改善ができています。
2.株式会社NTTぷらら
株式会社NTTぷららは、NTTドコモが運営するインターネットサービスプロバイダ。同社のサービスの一つ「ひかりTVショッピング」は、もともと「ひかりTV」契約者への付随サービスとして誕生しましたが、契約者以外の顧客数も大幅に増加し、重要なマーケティングチャネルとなったのです。
その一方、多くの顧客や製品が集まったことで、購買促進メールやキャンペーン告知メールを一斉送信しても開封やクリックされないという課題を抱えていました。この課題を解決するために、One to Oneマーケティングを実施。
ひかりTVショッピングの閲覧履歴を基にキャンペーンの案内、購入金額に応じた特別クーポンの送付、キャンペーン参加条件をクリア目前の顧客への通知などパーソナライズメールを配信します。また、定期的に効果検証をし、実施するシナリオの数も増やしたのです。
結果、従来の一斉配信メールで平均約19%だった開封率は平均約30%にまでアップし、メール経由の売上は約12.5 倍まで伸びました。
【8】One to Oneマーケティング向けリード獲得サービス
「IT利活用状況の調査」をもったリード獲得
Survey Lead Generationは「TECH+」の会員データベースを中心にITの利活用状況の調査を実施し、その結果とあわせて、回答者の情報もリード情報として納品する商品です。
TECH+で手配したギフト券をインセンティブに回答を募るため、通常のリード獲得と比べ製品への関心度は劣るものの、1社1社の「IT利活用状況」を可視化できるため、One to Oneのアプローチに適したリード獲得が可能となります。
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【9】まとめ
One to Oneマーケティングを推進すれば、、顧客ひとり一人に適したタイミングで最適なメッセージを伝え、顧客との関係性や顧客ロイヤルティを育成し、顧客生涯価値を高められます。One to Oneマーケティングを実行する際は、データ分析による顧客理解が欠かせません。
ユーザーインタビューや営業やカスタマーサポートへのヒアリングなどをして、顧客の課題や悩みを正確に把握し、ペルソナとカスタマージャーニーマップへ落とし込みましょう。そうすることにより、顧客ひとり一人に最適なマーケティング施策を展開できます。
顧客データが収集できないとお悩みのBtoB企業の担当者様は、弊社のSurvey Lead Generationをぜひご利用ください。、「マイナビニュース TECH+」と「マイナビニュース」の2つの会員データベースを対象にITの利活用状況の調査を実施と可視化をするため、One to Oneマーケティングに必要なリード情報の獲得が可能になります。