SaaSやサブスクリプションサービスの重要な指標である「チャーンレート」。
チャーンレートを分析することで原因や顧客行動を把握できるため、サービスの改善に活かすことができます。
継続的に売上を出していくためにも、チャーンレートをしっかり理解することが重要です。
当記事ではチャーンレートの種類や平均値、算出方法、改善のポイントをまとめて解説します。
マーケティング
【TECH+マーケティング責任者】武本 大平 [2022.11.24]
SaaSやサブスクリプションサービスの重要な指標である「チャーンレート」。
チャーンレートを分析することで原因や顧客行動を把握できるため、サービスの改善に活かすことができます。
継続的に売上を出していくためにも、チャーンレートをしっかり理解することが重要です。
当記事ではチャーンレートの種類や平均値、算出方法、改善のポイントをまとめて解説します。
チャーンレート(Churn Rate)は日本語で「解約率」「退会率」を意味し、一定期間内における自社サービスの利用を停止してしまったユーザーの割合を表しています。
チャーンレートを分析することで、改善に向けた具体的な施策を立てることが可能です。
サブスクリプションサービスを提供する企業にとって、チャーンレートは売上に直接関係するため、チャーンレートをいかにして下げるかが重要な課題となっています。
チャーンレートの平均値は、1か月あたり3%〜10%というのがひとつの目安と言われています。
ただしチャーンレートの平均は業種によって異なるため注意が必要です。
Recurly Research(リカーリー・リサーチ)の調査によると、業種別での平均チャーンレートは以下のようになっています。
自社の業種やサービスと照らし合わせ、数値が上回っているかどうかを確認してみてください。
数値を上回っている場合、何らかの対策を講じる必要があるかもしれません。
チャーンレートは大きく以下3つの種類に分類されます。
カスタマーチャーンレートは顧客数をベースにして算出するチャーンレートです。
一定期間内に解約した人だけでなく、有料会員から無料会員にダウングレードした人も解約の対象となります。
アカウントチャーンレートはサービス(サブスクリプションやメルマガなど)の登録数をベースにして算出するチャーンレートです。
アカウントは会社や家族単位で共有することもあるため、利用数とアカウント数が一致するとは限りません。
そのため、ユーザー単位で分析するカスタマーチャーンレートとは違うチャーンレートとして扱われます。
レベニューチャーンレートは収益をベースにして算出するチャーンレートです。
収益をベースに算出しているため、売上や価格別の解約率の把握に役立ちます。
複数のサービスを展開している場合はこのチャーンレートも算出しておきましょう。
さらにレベニューチャーンレートは、
の2種類に分類されます。
グロスレベニューチャーンレートは、一定期間内に発生した解約やダウングレードによる損失金額をベースに算出するチャーンレートです。
ネットレベニューチャーンレートは解約やダウングレードによる損失だけでなく、サービスのアップグレードやクロスセルによって得た利益も含めた金額の割合を示すチャーンレートになります。
また、ネットレベニューチャーンレートのみ計算結果がマイナスになることがあります。
これは、既存顧客から新規収益が、解約やダウングレードによる損失を上回っているケースです。このようなケースを「ネガティブチャーン」といいます。
ネガティブチャーンの達成はロイヤルカスタマーの増加や企業の成長を示しており、良い傾向と言えます。
なぜチャーンレートの改善が重要なのでしょうか?チャーンレートの改善が重要である理由は以下の3つが挙げられます。
それぞれ詳しくみていきます。
チャーンレートは売上に直接関係します。売上を安定させるためにも、ユーザーにサービスを継続的に利用してもらわなければいけません。
解約した顧客が増えると売上が下がってしまい、赤字になってしまう可能性もあります。
チャーンレートが改善されれば、LTVの向上にもつながります。
LTV(Life Time Value)は顧客生涯価値と訳され、顧客から生涯にわたって得られる利益を示す数値です。
チャーンレートをチェックし解約理由を分析することで、自社の商品・サービスの改善点やユーザーニーズの把握に役立ちます。
商品・サービスに反映できれば顧客満足度の向上につながり、LTVが高まります。
新規顧客獲得コストの抑制もチャーンレートを改善する理由の一つです。
新規顧客を獲得するためには、ある程度の広告費や人件費を投入する必要があります。
フレデリック・F・ライクへルドの「1:5の法則」によると、新規顧客に販売するコストは、既存顧客へ販売するコストの5倍かかるとされています。
既存顧客が減らず安定した利益が得られれば、新規顧客獲得にかけるコストを抑えることができます。
ただし、新規顧客獲得も企業を成長させるための重要な要素であるため、バランス良くアプローチすることが重要です。
ここでは各チャーンレートの算出方法について解説していきます。
カスタマーチャーンレートの場合、以下の方法で算出できます。
「カスタマーチャーンレート=一定期間内に解約した顧客数÷期間前の総顧客数×100(%)
【例】期間前の顧客数が1,000人、期間内に50人の顧客が解約した場合
(50÷1,000)×100=5%
アカウントチャーンレートの場合、以下の方法で算出できます。
「アカウントチャーンレート=一定期間内に解約したアカウント数÷期間前の総アカウント数×100(%)」
【例】期間前のアカウント数が1,000人、期間内に100個のアカウントが解約した場合
(100÷1000)×100=10%
グロスレベニューチャーンレートの場合、以下の方法で算出できます。
「グロスレベニューチャーンレート=期間内の解約・ダウングレードによる損失額÷期首の定期収益額×100(%)」
【例】期間内の解約・ダウングレードによる損失額が10万円、前月の月次収益が100万円の場合
(10万円÷100万円)×100=10%
ネットレベニューチャーンレートの場合、以下の方法で算出できます。
「ネットレベニューチャーンレート=(期間内の解約・ダウングレードによる損失額-当月のアップセルなどで得られた収益)÷前月の月次収益×100(%)」
【例】期間内の解約・ダウングレードによる損失額が10万円、当月のアップセルなどで得られた収益が15万円、期首の定期収益額が100万円の場合
(10万円−15万円)÷100×100=−5%
前述の通り、ネットレベニューチャーンレートの計算結果がマイナスの場合、収益が上がっていることを示しています。
ここではチャーンレートが上がってしまう3つの要因を解説します。
該当していないか、チェックしてみてください。
ユーザーは魅力やメリットを感じて、商品・サービスを利用します。
しかし、商品・サービス自体の品質が悪いと継続して利用してもらえず、チャーンレートを上げる要因となってしまいます。具体的な理由には以下のものが挙げられます。
ユーザーによって解約理由は様々。解約理由を解決できれば、今後の解約防止に繋がります。
ユーザー解約理由をしっかりとヒアリングしておきましょう。
トレンドの変化等に伴い、ニーズがなくなった可能性も考えられるでしょう。
ユーザーのニーズは絶えず変わります。
最新の市場情報や顧客の動向を把握しておかないと、いつの間にか利用顧客が激減してしまう事態に陥りかねません。
ネットリサーチやインタビューなどを定期的に行い、常に市場情報や顧客の動向を把握しておくことが大切です。
チャーンレートを上げてしまう要因は商品・サービスだけでなく、カスタマーサービスにもあります。
売上を安定させるには、顧客との信頼関係を築いていくことが重要です。
どんなに商品・サービスに満足していても、サポート体制や購入プロセスが整っていないと、顧客満足度が下がってしまいます。
売上を安定させるためにも、チャーンレートはなるべく抑えたいものです。
チャーンレートは自社の取り組み次第で改善することができます。
ここではチャーンレートを改善する3つの方法を紹介します。
チャーンレートを改善するためには、サービス・商品の訴求方法を見直すようにしましょう。
どれだけ良い商品・サービスだとしても、顧客側でメリットを感じなければ意味がありません。
サービス・商品を訴求するためには、ユーザー目線で考えることが大切です。
など洗い出し、再度訴求方法を見直してみましょう。同じ商品・サービスであっても訴求方法を変えるだけで、印象は大きく変わります。
また、定期的なヒアリングやアンケートを実施し、ユーザーの意見を取り入れることも有効です。客観的意見を取り入れることで、自社目線では気づかなかった発見を得られることもあります。
市場ニーズに合った価格やプランを用意することが大切です。競合と比較しサービスと料金のバランスが取れているかを確認しましょう。
顧客満足度の向上はチャーンレートの改善につながります。
スピーディーかつ丁寧に対応できれば、ユーザーは企業に対して信頼を抱いてくれるでしょう。
カスタマーサービスやカスタマーサクセスの体制を徹底し、顧客ごとにコミュニケーションを最適化していきましょう。しかし、事業規模が大きくなるにつれて、顧客対応も複雑になりがちです。
顧客対応を効率化していきたいのであれば、MAやCRMなどツールの導入を検討しましょう。
顧客情報を一元管理することができるため、迅速な個別対応を実現できます。ユーザーの不安を解消し満足度向上が期待できるでしょう。
今回の記事ではチャーンレートの種類や平均値、算出方法、改善のポイントをまとめて解説しました。チャーンレートは企業の売上を維持・向上するために重要な指標です。
チャーンレートが上がってしまうのには原因があり、分析することで自社商品・サービスの向上につなげることができます。
チャーンレートを分析し、洗い出された顧客のニーズを参考に、自社の施策につなげていきましょう。
【TECH+マーケティング責任者】武本 大平
2021年からTECH+ のマーケティング部門立ち上げを推進。現在はTECH+マーケティング担当として、 各プロダクトの販促や各種マーケティングアクティビティの立案・実行を担当。マーケティング実務検定3級、SEO検定1級、ネットマーケティング検定を保有。
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