カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを正確に把握しているでしょうか。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、目的や顧客への姿勢などが異なる組織であり、混合するべきではありません。
これからカスタマーサクセスに取り組む企業は、まずはカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを明確にしたうえで、カスタマーサクセスの専門チームを設けるようにしましょう。
本記事では、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いや混同するリスクなどを解説します。
マーケティング
【TECH+マーケティング責任者】武本 大平 [2022.11.09]
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを正確に把握しているでしょうか。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、目的や顧客への姿勢などが異なる組織であり、混合するべきではありません。
これからカスタマーサクセスに取り組む企業は、まずはカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを明確にしたうえで、カスタマーサクセスの専門チームを設けるようにしましょう。
本記事では、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いや混同するリスクなどを解説します。
カスタマーサクセスとは、顧客の成功を支援する取り組みや組織のことです。
顧客の成功とは曖昧な定義ですが、一般的には自社製品を活用して期待した成果を得られた状態を意味します。
カスタマーサクセスが重要視される背景には、SaaSビジネスの普及や世界がサブスクリプションモデルに向かうことにより、顧客との関係性が長期的に続くことになったことが挙げられます。
大手コンサルタント企業ベイン・アンド・カンパニーの名誉ディレクターであるフレデリック・F・ライクヘルド氏は、調査結果より1:5の法則(新規顧客の獲得には既存顧客の5倍のコストがかかる)を提唱し、既存顧客の維持の重要性が高まりました。
国内に目を向けると、急速な人口減少により、新規顧客の獲得自体が難しくなっています。
カスタマーサクセスが顧客の成功を支援すれば、顧客は自社製品を継続して利用してくれたり、関連製品やグレードアップなどをしてくれたりするのです。
下記の記事でカスタマーサクセスについて網羅的に詳しく解説しています。
・カスタマーサクセスとは?具体的な業務内容から成功のポイントまで解説!
カスタマーサクセスとカスタマーサポートはよく混同されますが、実際には下記5つの違いがあります。
以下では、それぞれの違いについて見ていきましょう。
カスタマーサポートの役割は、製品の故障や使用法に悩む顧客への対応です。
対応チャネルとしては、電話やチャット、Eメール、SNSなどが挙げられます。
カスタマーサポートの対応が適切でなければ、「長い時間、待たされた」や「問題が解決しなかった」、「担当者の愛想が悪かった」などの不満が生じ、解約の可能性が高まります。
カスタマーサクセスの目的は、その名の通り顧客を成功へと導くことです。顧客の成功体験を実現するために、顧客の成功の定義や製品の活用法の紹介、顧客でさえ気づいていない課題の把握と解決など幅広い業務を実施します。
カスタマーサポートの目的は顧客の課題解決とクレーム対応、カスタマーサクセスの目的は顧客の成功支援と覚えておきましょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの大きな違いは、顧客への姿勢です。カスタマーサポートが動くのは、顧客からの問い合わせやクレームがあったとき、つまりカスタマーサポートは受動的に動きます。
それに対してカスタマーサクセスは、データを分析し、働きかける顧客を決めるのです。
例えば、FAQを何度も閲覧している顧客がいれば、製品活用法に困っていると判断し、メールで活用法をまとめたガイドブックを送信します。
もしくは製品定着率が高い顧客には、さらなる価値を提供するために、アップセルを提案するのです。
このようにカスタマーサクセスは、データドリブンで能動的に顧客を支援します。
もしカスタマーサクセスが受動的であれば、問い合わせをせずに解約する顧客を損失することになり、チャーン率が上昇するでしょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートでは、KPI/KGIも大きく異なります。
カスタマーサポートで重要なのは、数多くの顧客の問い合わせに、素早く正確に対応することです。
つまり、カスタマーサポートのKPIは問い合わせ対応数や課題解決率、課題解決時間などの「効率」を重視します。
例えば、一人の顧客対応に大きな時間を費やすと、他の顧客を待たせることになるでしょう。
一方、カスタマーサクセスのKPIは収益に関する指標が多いです。
なぜなら、カスタマーサクセスの取り組みにより、成功を実感した顧客は、契約更新やアップセル/クロスセルなどの売り上げに直結する行動を起こすためです。
また、カスタマーサクセスは先回りして顧客の課題を解決するため、顧客状態を測定する指標もKPIとして定めます。
具体的には、チャーン率やアップセル/クロスセル率、ヘルススコア、NPS®(ネットプロモータースコア)などが重要なKPIです。
下記の記事でカスタマーサクセスのKPIについて詳しく解説しています。
・カスタマーサクセスのKPIとは?KPIを達成するためのコツもご紹介!
カスタマーサポートは、基本的に顧客との関係性は一回きりです。顧客の問い合わせに対応した時点で、顧客との関係性は終了します。
それに対してカスタマーサクセスは、顧客が自社製品を続ける限り関係性が継続するため、長期的な関係になるのです。
カスタマーサクセスの成功は顧客と長期的な関係性を築くことと言っても過言ではありません。その理由は、顧客が自社製品を長く使うほど、自社の売り上げは伸びるからです。
それでは、どのようにして顧客と長期的な関係性を構築できるのでしょうか。
その方法は様々ありますが、重要なのが早い段階で顧客に成功を提供することでしょう。顧客の興味関心が最も高くなるのは、製品導入直後です。
この段階で適切な支援をし、大小関係なく成功を届けられれば、顧客の信頼を獲得できます。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートで求められるスキルが重複する部分もあれば、異なる部分もあります。
カスタマーサポートで重要なスキルは、顧客の問い合わせに対して、迅速かつ的確に答えを提供できるスキルです。そのためには、自社製品の専門家とならなければいけません。
また、不満を抱えた顧客への傾聴力や共感力、非難を受け入れる平常心なども求められます。
カスタマーサクセスの場合、ジェネラリスト的な幅広いスキルや経験が必要です。
カスタマーサクセスならではのスキルは、データ分析スキルと課題発見力でしょう。カスタマーサクセスの仕事は、顧客の課題解決をする仕事とも言えます。
問題は、顧客が課題を把握していないケースが多々あることです。課題を把握していない状態では、製品サービスを導入してもらっても、有効な改善策にはつながりません。
だからこそ、カスタマーサクセスには顧客をヒアリングし、本質的な課題を発見するスキルが求められるのです。
また、カスタマーサクセスの意思決定やアクションはデータドリブンで実施されるため、データ分析スキルも求められます。
顧客データを分析し、課題やニーズを正確に把握することで、顧客の成功を支援できるわけです。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートを混同してしまう理由は3つあります。
1つめが字面が似ているためです。カスタマーという単語が共通してあることから、カスタマーサポートを今どきの言い方にしたのがカスタマーサクセスと誤解する方は少なくありません。
2つめが求められるスキルが重複するためです。カスタマーサクセス担当者は、顧客に最適な使用法を伝えられるように、製品のエキスパートである必要があり、それは顧客の問い合わせに対応するカスタマーサポートも同じです。
また、顧客と直接コミュニケーションを取るという点が共通しているため、説明力や共感力、打たれ強さも求められます。必要なスキルで異なる部分もありますが、重複する部分も多いがゆえに、混同する原因となっているようです。
3つめがカスタマーサクセスの認識が不足しているためです。株式会社リンクがIT企業の経営層・マネジメント層を対象にした調査によると、カスタマーサクセスの認知度は52.3%だと判明しています。
言い方を変えると、47.7%はカスタマーサクセスについて理解していないのです。
カスタマーサクセスを正確に理解していないため、カスタマーサクセス業務をカスタマーサポートに担当させる企業もあることでしょう。
しかし、記事で見てきたようにカスタマーサクセスとカスタマーサポートは本質的に異なるため、明確に業務担当範囲を分けなければいけません。
それでは、カスタマーサポートがカスタマーサクセスを担うとどうなるのでしょうか。まず考えられるのがチャーンの増加です。カスタマーサポートは、顧客が問い合わせをして初めて機能します。
顧客の問い合わせに対して、適切なサポートを提供することは重要ですが、問い合わせをしない顧客の存在を忘れてはいけません。
あなたもカスタマーサポートの問い合わせをせずに、サービスやメルマガ行動などの解約をした経験があるのではないでしょうか。
つまり、受動的なカスタマーサポートだけでは、問い合わせをしない顧客に対応できないため、チャーンが増加します。
長期的に見れば、悪い評判や口コミが広まり、自社製品の売り上げが大幅に下がるでしょう。
カスタマーサクセスもまた、製品定着支援や顧客対応などをしますが、その本質は将来的に顧客が抱えるであろう課題を先回りして解決することです。
言い換えれば、顧客に課題を抱えさせないのがカスタマーサクセスの役割であり、受動的なカスタマーサポートでは実施できません。
ここまで読むと、組織に必要なのはカスタマーサポートではなく、カスタマーサクセスと考える方もいるでしょう。
しかし、結論から申し上げると、企業を成長させるためにはカスタマーサクセスとカスタマーサポートの両方が必要です。
先に述べたように、受動的なカスタマーサポートだけでは、チャーンの減少は防げません。
一方、カスタマーサクセスにカスタマーサポートの業務を兼業させた場合、問い合わせ対応に時間がかかり、データ分析や先回り行動ができないなどのリスクが生じます。
社内に十分な人的リソースがない場合でも、まずは小規模のカスタマーサクセスチームを構築するのがおすすめです。
そうすれば、社内にカスタマーサクセスの意識の定着やノウハウの蓄積などが可能となります。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは多々ありますが、重要な違いは顧客への姿勢でしょう。
カスタマーサポートが顧客の問い合わせが来た時に機能する受動的な組織であるのに対し、カスタマーサクセスは顧客データを分析し、課題を先回りして解決する能動的な組織です。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、目的や求められるスキルなども異なるため、混同するべきではありません。それぞれの違いを理解したうえで、カスタマーサクセスに取り組みましょう。
【TECH+マーケティング責任者】武本 大平
2021年からTECH+ のマーケティング部門立ち上げを推進。現在はTECH+マーケティング担当として、 各プロダクトの販促や各種マーケティングアクティビティの立案・実行を担当。マーケティング実務検定3級、SEO検定1級、ネットマーケティング検定を保有。
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