「カスタマーサクセスが辛い理由」と「理由別の対処法」を丁寧に解説

カスタマーサクセスは辛い?その理由と対処法を解説

カスタマーサクセスとは、顧客の成功を支援し、チャーン率の低下やアップセル/クロスセルの増加を目指す職種です。

その市場規模は年々拡大しており、大きな注目を集めるため、カスタマーサクセスに興味がある方は多いのではないでしょうか。

しかし、同時に下記のような悩みを抱える人も少なくありません。

  • カスタマーサクセスの仕事は辛い?
  • どのような人材が向いているの?

そこで本記事では、カスタマーサクセスの基礎知識や辛い理由5選と対処法、向いている人材について解説します。

【1】そもそもカスタマーサクセスとは

カスタマーサクセスとは、直訳すると「顧客の成功」を意味します。企業におけるカスタマーサクセス部門の役割は、能動的に動き、顧客の成功にコミットすることです。

SaaSビジネスが普及したことで、企業と顧客の関係性は変わりました。かつては製品を販売した時点で顧客との関係性は終了しましたが、現在は販売後にも顧客との関係性を維持し、チャーン(解約)を防がなければいけません。

カスタマーサクセスが契約後から顧客を支援し、成功体験を提供できれば、顧客との関係性を保てます。現代のビジネスにおいて、カスタマーサクセスはビジネスの成長を担っており、その重要性は非常に高いです。

詳しくはこちら!

下記の記事でカスタマーサクセスについて網羅的に詳しく解説しています。
カスタマーサクセスとは?具体的な業務内容から成功のポイントまで解説!

【2】カスタマーサクセスの市場規模

カスタマーサクセスの重要性は、その市場規模を見ることで、よく理解できます。

カスタマーサクセスツールの国内市場規模は300~500億円、世界市場規模は3,000~4,000億円と言われているほど巨大な市場です。

特に日本国内は、人口減少のスピードが早く、新規顧客の獲得が難しい状況になっています。その点を踏まえると、既存顧客との持続的な関係構築が重要であり、カスタマーサクセスの重要性も年々増すでしょう。

【3】営業/カスタマーサポートとの違い

カスタマーサクセスとよく混同されるのが、営業とカスタマーサポートです。しかし、カスタマーサクセスと営業/カスタマーサポートは明確に異なるため、違いを把握しておきましょう。

まずはカスタマーサクセスと営業の違いを見ていきましょう。

カスタマーサクセスの目的は、顧客を成功へと導き、LTVやアップセル/クロスセルの向上、チャーンの低下などを実現することです。

一方、営業は新規顧客の獲得を目的にします。どちらも収益を生み出すという点は共通していますが、担当する領域が異なります。

次にカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いをご紹介しましょう。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは多々ありますが、顕著な違いは顧客への姿勢です。カスタマーサクセスは、データ分析により顧客の課題やニーズを予測し、「能動的」に顧客に働きかけます。

それに対し、カスタマーサポートは顧客からの問い合わせを受けて働くため、「受動的」な姿勢です。

その他にも、目的や指標などが異なります。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いについては、下記記事で詳細解説していますので、ぜひこちらも参考にしてください。

詳しくはこちら!

下記の記事でカスタマーサポートとの違いについて詳しく解説しています。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの重要な違いと混同するリスク!

【4】カスタマーサクセスは本当に辛いのか?

「カスタマーサクセスは辛い」という意見を多々目にしますが、本当にそうなのでしょうか。

結論から言えば、カスタマーサクセスは営業やマーケティングなどの他の仕事と同様、辛い部分もあれば、やりがいを感じられる部分もあります。

カスタマーサクセスが辛いと言われる理由として、比較的新しい仕事であり、十分なノウハウが確立されていないことが挙げられます。

カスタマーサクセスは2015年頃より世界的に広まりましたが、国内ではまだその数は十分ではありません。

株式会社リンクがIT企業の経営層・マネジメント層を対象とした「カスタマーサクセスに関する意識調査」によると、カスタマーサクセスの認知度は52.3%で、取り組んでいる企業は4割強、多くある課題がノウハウについてだと判明しています。

カスタマーサクセスはまだノウハウが確立していない状態であり、手探りで実施している企業が多いからこそ、辛いと感じる人が多いようです。

しかし、カスタマーサクセスは顧客と直接かかわり、企業の成長に大きく関与する部門でもあります。

市場価値が高まっている点も踏まえると、辛さはあるものの、やりがいが大きく、自身の市場価値も高められるでしょう。

【5】カスタマーサクセスが辛い理由と対処法

カスタマーサクセスが辛い理由の一つに、十分なノウハウが蓄積されていないことが挙げられますが、それ以外にも下記5つの理由が考えられます。

  • 重い責任がのしかかる
  • 顧客と良い関係性を築けない
  • 社内の協力を得られない
  • 抱える仕事量が多い
  • 顧客の成功につながらない

ここからは、カスタマーサクセスが辛い5つの理由と対処法を解説します。

1.重い責任がのしかかる

カスタマーサクセスは、下記3つの利益をもたらすため、大きな責任がのしかかります。

  • チャーンの減少
  • アップセル/クロスセル(既存顧客の契約金アップ)
  • 顧客満足度の向上

先に述べたように、新規顧客の創出が難しい現代においては、既存顧客の維持と売り上げ拡大ができるかどうかでビジネスの成長が決まるのです。

イタリアの経済学者ビルフレッド・パレート氏が提唱した「パレートの法則」に代表されるように、顧客全体の2割を占める優良顧客が売り上げの8割に貢献すると言われています。

カスタマーサクセスが正常に起動すれば、チャーンの低下を防止しながら、既存顧客の契約金額のアップと顧客満足度の向上を実現でき、企業は大きな発展を遂げるでしょう。

見方を変えれば、事業を継続できるかどうかは、カスタマーサクセスによると言っても過言ではありません。

それゆえに、大きな責任を抱えている担当者は多いようです。

特に、顧客が途中解約するチャーンが発生したときに、辛いと感じる担当者が多くいます。

【対策】
カスタマーサクセスが、すべての顧客を成功に導くことはほぼ不可能です。例えば、自社製品が適していない顧客を相手した場合、高確率でチャーンが発生するでしょう。

チャーンが発生したときは、次のチャーンを防ぐチャンスだと前向きに捉えることが重要です。アンケートや外部調査機関などを活用し、チャーンをした顧客に原因を尋ねましょう。

原因を分析して、解約理由を深く理解し、チャーン率の低下へとつなげることが重要です。

2.顧客と良い関係性を築けない

カスタマーサクセスは、伴走形式で顧客を成功へと導きます。そのためには、顧客と良い関係性を築くことが重要ですが、「顧客が提案を聞き入れてくれない」や「顧客が本音で話してくれない」などの関係性作りで悩む担当者は少なくありません。

【対策】
顧客と良い関係性を築くポイントは多々ありますが、特に有効な施策が顧客にとっての成功を事前に理解することです。例えば、同じMAツールを提供していても、リード獲得を目標にする企業があれば、商談数を目標にする企業もあるでしょう。

また、同じ企業でも事業ステージにおいて目的は変わります。

さらに、カスタマーサクセスがコミュニケーションを取る担当者の裏には、部門長や意思決定者などの複数の利害関係者がいることも忘れてはいけません。

担当者が満足する結果を示せても、より大きな力を持つ利害関係者が満足しなければ、チャーンへとつながります。

だからこそ、カスタマーサクセスは初めに顧客にとっての成功を正確に把握しなければいけません。

いくつかの目標を見極めたら、早期に実現できる目標から取り組んで、アーリーサクセスに注力しましょう。小さいながらも、素早い成功体験を提供できれば、顧客は徐々に信頼してくれます。

3.社内の協力を得られない

カスタマーサクセスは単一_部門であると同時に、各部門と連携を進めて、顧客を成功へと導かなければいけません。

しかし、カスタマーサクセスは新しい組織ということもあり、なかなか他部門の協力を得られずに辛いと感じる担当者は多くいるようです。

例えば、カスタマーサクセスと営業は収益を生み出すという点で目標は一致しています。しかし、そのアプローチ方法が異なるケースは珍しくありません。

営業がさらなる製品販売を達成するために新機能の追加を提案すれば、カスタマーサクセスは新機能をアップセルで提供した方が良いと提案することもあるでしょう。

他部門がカスタマーサクセスについて理解をしていれば、適度な摩擦は成長へとつながります。

しかし、そうでない場合、カスタマーサクセスは他部門の協力を得られないため、辛いと感じる結果になるのです。

【対策】
社内の協力を得るためには、まずはトップダウンの働きかけで、カスタマーサクセスに関する理解を深めてもらいましょう。

そのうえで、カスタマーサクセスは他部門と信頼性に基づいた関係性の構築を進めなければいけません。

具体的には、毎月や四半期ごとに他部門との情報共有の場を設ける、他部門の声に耳を傾ける、そして他部門と共通の成功指標を定めることが有効です。

4.抱える仕事量が多い

カスタマーサクセスに最適な人材はまだ少ないため、一人当たりの抱える仕事量が多い傾向にあります。

HiCustomer株式会社実施の「カスタマーサクセス白書2020」によれば、カスタマーサクセス担当者1人あたりが担当する企業数は下記の通りです。

  • 1~15社:23.1%
  • 16~50社:32.7%
  • 51~100社:26.9%
  • 101~200社:6.4%
  • 201社以上:10.9%

この調査結果からも分かる通り、カスタマーサクセス担当者が抱える業務量は多いです。

例えば、50社と定期的にコミュニケーションを取り、必要に応じてトレーニングの実施やアップセル/クロスセルの提案をするのは、大きな負担となるでしょう。

また、自社の事業拡大に伴い、1人あたりの抱える仕事量が爆発的に増加するケースも考えられます。

【対策】
カスタマーサクセス担当者の仕事量を減らす方法は2つあります。

1つめが、新たなカスタマーサクセス人材を採用することです。

しかし、カスタマーサクセス人材の数は少なく、多くの企業が優秀な人材を欲しているため、予算の少ない企業は実行が難しいでしょう。

そこでおすすめしたいのが、2つめの方法のカスタマーサクセスツールの導入です。

現在、多くのベンダーがカスタマーサポートツールを提供しています。

ツールを活用すれば、カスタマーサクセス業務の自動化/効率化を実現できるため、仕事量の削減へとつながるのです。また、自社内でカスタマーサクセス人材の育成にも取り組みましょう。

カスタマーサクセス業務で得られた知見やノウハウは、言語化して、社内にマニュアルとして残します。そうすれば、属人化の防止や効果的な人材育成にも期待できます。

詳しくはこちら!

下記の記事でカスタマーサクセスにオススメのツールについて詳しく解説しています。
【2022年最新版】カスタマーサクセスツール13選の特徴や機能を比較!

 

5.顧客の成功につながらない

カスタマーサクセス担当者で、顧客の成功につながらないと悩む担当者は少なくありません。顧客を成功へと導けなければ、顧客の満足度は向上せず、チャーンの原因となってしまいます。

チャーンが発生したことで、大きな責任を感じ、辛いと感じてしまうのです。

【対策】
カスタマーサクセスにおいては、顧客の成功へコミットすることばかり重要視されますが、それと同じくらい正しい顧客に製品を販売することも重要です。

どれほど優秀なカスタマーサクセスであっても、自社製品に向いていない顧客を相手にすれば、顧客を成功へと導けません。

それでは、どのように正しい顧客を見極められるのでしょうか。

基本ですが、正しいペルソナの作成が有効です。顧客インタビューやアンケート調査などの一次情報をもとに、具体性が極めて高いペルソナを作成し、各部門で共有しましょう。

各部門がペルソナを意識した施策展開をすれば、正しい顧客に製品販売できる可能性が高まります。

また、カスタマーサクセス部門から間違った顧客の特徴を各部門と共有し、データ主導で販売相手を決めるのも有効です。

また、カスタマーサクセスの成功事例からも対策を知る事ができます。

詳しくはこちら!

下記の記事でカスタマーサクセスの事例について詳しく解説しています。
カスタマーサクセスの成功事例10選│BtoB、BtoCに分けて解説

【6】カスタマーサクセスが向いている人の特徴

カスタマーサクセスに求められる主なスキルは以下の通りです。

  • 自社製品と事例への知見
  • 業界への知見
  • 課題発見・解決力
  • コミュニケーションスキル
  • ロジカルシンキング
  • コンサルティングスキル
  • データ分析
  • 巻き込み力

これらのスキルの中で、特に重要なのは自社製品への知見とコミュニケーションスキル、課題発見力です。

カスタマーサクセス担当が自社のファンであり、大きな情熱を持っていれば、顧客を動かせます。

また、カスタマーサクセスはデータ分析をし、顧客さえ気づいていない課題を発見し、先回りして解決しなければいけません。

このようにカスタマーサクセスには、ビジネスにおける総合力が求められますが、やはり自社製品への情熱は必須です。

そのこともあり、カスタマーサクセスは自社で育成するのが理想となります。

【7】まとめ

カスタマーサクセスが辛いと感じる理由は、ノウハウ不足や多くの仕事量、顧客との関係性など様々です。

しかし、辛いと思う理由には原因があり、それらを解消することでカスタマーサクセスの仕事にやりがいを見出せるでしょう。

カスタマーサクセスは大変な面もありますが、事業に大きく貢献し、自身の市場価値を高められる仕事です。

カスタマーサクセスが辛いと感じれば、ぜひ本記事を参考に、その原因の把握と対処をしてください。

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